【サッカー】J1浦和に、アジアの盟主への後方支援 整った三位一体の環境

新築されたクラブハウス(後方右側)をバックに練習する浦和の選手たち
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 うまかった。グリルされた牛肉は、厚めにカットされているにもかかわらず、柔らかい。噛むという作業は必要なく、歯を落とすだけで口の中で分解されていった。こんなうまいものを毎日食べられるなんて。選手がうらやましく思った。

 J1浦和の練習拠点のさいたま市大原サッカー場に、総工費5億円をかけた1190平方メートル3階建ての増築棟が、9月末に完成。10月末に報道陣向けに内覧会が行われた。青々としたピッチを見下ろしながら、試合前に選手に提供される食事を、口にする機会があった。

 選手の意見や、他クラブの施設を見学して作り上げたクラブハウス増築棟は「トレーニング」「休養」「栄養」の3つのテーマを重視して作られた。

 まず「トレーニング」。1階に作られた広々としたトレーニングルームは、従来の130平方メートルから、220平方メートルに拡張された。大きな窓からピッチを眺めながらトレーニング器具を使用できるほか、雨天時には室内でのアップやストレッチが可能になるなど、従来不自由だった部分が改善された。

 次に「栄養」。テラス付きの食堂は最上階の3階に、新設された。実はこれまで、クラブハウス内に食堂はなかった。選手は寮まで車で移動することを強いられてきた。メニューについては、五輪選手らトップクラスの選手が使用する国立スポーツ科学センター(JISS)を見学し、スポーツ栄養士の指示を仰いだ。試合前後にメニューを変えるなど工夫し、メダリストが食べてきたものと同じ食事を提供するようになった。山道守彦強化本部長は「適切なタイミングで十分な栄養を摂取できるようになった」と強調した。

 そして「休養」。2階には「仮眠室」を新設。休みたいときに高級マットレスに横になることで、疲労を軽減することができる。また、20平方メートルしかなかったリラクセーションルームは120平方メートルに拡張。アロマを用意し、治療器も設置。リラックスできる、居心地のいい居住空間はメンタル面への効果が期待できそうだ。

 淵田敬三代表は「アジアで1番になるために施設も整えないと」と胸を張る。企画が上がったのは14年の就任当初だった。「予算案に投資計画がないことに驚いた。年度計画を作り直させて、どんな投資ができるかと。すぐに増築案が出た」と明かす。

 ピカピカの増築棟に、山道強化本部長は黎明期からの足跡を思い起こした。

 「93年は管理棟しかなく、風呂もなかった。その前の92年は調布で練習していた。94年に風呂とトレーニングルーム、03年にクラブハウスができて、ナビスコ杯で初タイトルを取った。ジプシーな状況が続いていた10年間は勝てなくて2部にも落ちた。環境もリンクしてくるのかなと、今、思います」。

 練習拠点さえなかった時代から、少しずつ整って、完成した快適な“居住空間”。選手にとっても好評だ。クラブハウスの滞在時間も格段に増え、映像を見ながら意見交換する場にもなっている。

 DF槙野智章は「自分はケルンやサンフレッチェ。他の選手も前のクラブの話をしました。サッカーはピッチ外でもコミュニケーションをとってチームワークを高める必要がある。選手からは感謝しかない。これがあるからプレーがよくなったと言われるようにしたい」と効果を期待する。

 これからACL決勝という大一番を控える浦和。勝てば10年ぶりのアジア王者になる。だが目標は、その座に君臨し続けること。「トレーニング」「栄養」「休養」。三位一体の環境整備が果たされ、アジアの盟主への後方支援は整った。(デイリースポーツ・鈴木創太)

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