【野球】緒方カープ3連覇へ最大の敵はやはり金本虎

 広島は昨年の東京ドームに続き、今年も2位チームの本拠地で胴上げを決めた。37年ぶりのリーグ連覇となった緒方カープ。真っ赤に染め上がった甲子園での決着に、何か因縁めいたものを感じる。

 「9点差を引っ繰り返されたり、劇的な逆転サヨナラ弾でのマジック点灯があったり…今年は阪神戦がポイントになった感が強いですね」

 2年連続優勝を間近で見てきた広島OBの野球評論家・横山竜士氏はそう語る。金本虎との戦いは、3月31日の開幕戦に始まった。2年連続開幕投手になった昨年の沢村賞投手・ジョンソンがまさかの4回KO。FA加入の糸井が刺激剤となった猛虎打線につかまり、この試合を落とす。続く2戦目は両軍合わせて28四死球という大乱戦。この開幕3連戦が激闘のスタートとなり、5月6日の“甲子園大惨事”につながっていく。

 その5月6日の8回戦は、広島が連覇を目指す上でエポックメイキング的な試合だった。先発は岡田で、五回表まで9-0と大量リードしながらそこから大暗転。岡田の制球難に端を発し、今年先発でブレークした薮田が七回に逆転を喫した。9点差をひっくり返されたのは95年・中日戦以来、22年ぶりの屈辱だった。緒方監督が「自分でも記憶にない」と茫然自失するほどの衝撃だったが、のちにこれが教訓として生きる。改めて野球の怖さを味わったことで、最後まで気を緩めず、諦めない“カープ野球”がしっかりと根付いた。

 6月末から8月中旬までのこのカードは「広島優位」で推移するが、横山氏は阪神ナインの成長を試合ごとに感じていたという。そこに8月末の快進撃。月初に「11」もあったゲーム差が、月末には「5・5」まで縮まっていた。広島の8月成績が12勝13敗1分けとほぼ五割だったにもかかわらずだ。「阪神はすごいスピードで階段を上っていると思います」と同氏が言う理由は、中谷を筆頭とする“金本チルドレン”と呼ばれる若手選手の急成長に他ならない。

 「投げる方では秋山、打つ方で中谷。岩崎や石崎という中継ぎも力はありますし、桑原にしてもカープのリリーフ陣と比べて遜色はない。ヒタヒタと階段を駆け上がってくる感じですね」

 連覇が決まった18日の24回戦も、2点を先にリードしながら中谷、そして代打・陽川の一発で追いつかれた。広島側から見ても、彼らの成長には目を見張るものがある。今季は好不調の波があった高山や北條といったあたりも潜在能力は高いし、一皮むければ相当な戦力になるのは間違いない。エースのメッセンジャー、スランプに陥った藤浪を欠く中でも「奇跡を起こすかも…」と思わせた金本阪神が来季、球団初の3連覇を目指す緒方広島の最大のライバルとなるのは疑いようがない。

 11度舞った緒方監督の胴上げを、カープで同じ釜のメシを食った阪神・金本監督がどんな思いで見つめていたのか。横山氏が感じたように、若虎が猛ダッシュで階段を駆け上がってくれば、たとえ絶頂期の赤ヘル軍団でも止めることが難しいかもしれない。「緒方広島VS金本阪神」の新たなる戦いの火ぶたが切られた-甲子園Vを見てそう感じた。(デイリースポーツ・中村正直)

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