【スポーツ】“関節女子”殊勲の銀メダル、異色柔道家・角田夏実

 異色の女子柔道家が初出場の世界選手権(ブダペスト)で殊勲の銀メダルを手にした。ブラジリアン柔術やサンボの技術を取り入れた関節技を得意とする25歳の角田夏実(了徳寺学園)は、勝利した5試合のうち3試合を寝技で仕留め、世界にその名をとどろかせた。

 普段は笑顔がキュートな女性。だが、畳の上ではえげつない。あらゆる体勢から腕ひしぎ十字固めに移行し、テコの原理で相手の腕をきめる。相手がたまらず「参った」(タップ)をすれば、鮮やかな投げ技じゃなくてもれっきとした一本勝ちだ。立ち技から「有効」が消えた新ルールにおいて、一本を確実に取ることができる関節技は大きな武器になった。

 1992年に千葉県八千代市に生まれ、小学2年の時に父の影響で八千代警察署で柔道を始めた。八千代高2年時の高校総体で3位に入るなど頭角を現したが、大学は強豪校ではなく国立の東京学芸大学に進学した。

 巴投げから寝技に移行し、腕ひしぎ十字固めで仕留める必勝パターンは大学時代に完成。東京学芸大の練習は自主性に任されており、強豪校に比べれば“緩かった”ものの、創造性が磨かれた。サンボやブラジリアン柔術の試合に出場していたOBが稽古に訪れると、自然と関節技の特訓になった。「少しずつコツが分かってくると面白くて」。寝技の魅力にとりつかれ、多い時は週4回、寝技の練習を敢行した。

 ドリル(反復)練習を繰り返すうちに、無理な体勢からでも腕関節を決められるようになった。「自分の中で『これは決められるな』とわかる感覚があるんです」。サンボや柔術の技術を応用した独自の感性は、コーチが驚くほどだった。

 投げ技が主流の日本女子の中で異色の存在だが、度重なる故障で試合に出ることができない時期も続いた。しかし、昨年11月の講道館杯を初制覇すると、続くグランドスラム東京でも初優勝。25歳で初の日本代表に選ばれ、「世界選手権は五輪と同じくらい遠いと思っていたが、代表の自覚を持ちたい」と決意を胸に戦った。

 世界選手権の決勝では、同門の志々目愛(了徳寺学園職)に一本負けし、涙を流した。「練習不足だった。試合前にハプニングが起きて、出れるかどうか分からなかった。でも寝技を練習してきてよかった」。代表が決まってからも左膝の故障などで練習が積めず出場も危ぶまれただけに、負けた悔しさと戦い抜けた安どが入り交じった。

 この階級には、角田と志々目以外にも17歳の阿部詩(兵庫・夙川学院高)や、五輪3大会出場で休養中の中村美里(三井住友海上)ら強豪ぞろい。2020年東京五輪の代表の座はもちろん1つで、角田は「みんな競っていて差がない。気を抜けばいつでも抜かされる」と緊張感を口にする。3年後に向けては必殺の関節技だけでなく投げ技も磨き、唯一無二の存在になる。(デイリースポーツ・藤川資野)

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