【サッカー】消えるポドルスキ…起用法に最適解は見い出せるのか

 神戸FWルーカス・ポドルスキ(32)が消えている。取材エリアを通らず帰宅した話ではない。20日のJ1第23節・横浜M戦(0△0)。加入後5試合連続で先発出場した元ドイツ代表だったが、4試合連続ノーゴールで後半36分に途中交代。相変わらず周囲との連係を欠き、来日初のシュート0本と全く見せ場を作れず、苛立ちをチームメイトにぶつける姿だけが目立った。

 成績不振でネルシーニョ監督(67)が解任され、後任として暫定的に指揮を執ることが決まった吉田孝行監督(40)は「守備の堅いチームだったということを思い出せれば」と、限られた時間の中でまずは堅守再生に注力した。スコアレスドローで、勝ち点3を得ることはできなかったが、5試合ぶりの無失点で終えたことは少なからず収穫となった。

 問題は攻撃面だ。本来神戸は堅守速攻を志向するチームのはずだが、2トップの一角で起用されるポドルスキが中盤に下りて足元でボールを受けたがることで、縦への攻撃に停滞感が生まれている。

 チームの抱える問題を象徴するようなシーンが、横浜M戦の前半28分にあった。FW渡辺千真(31)が自陣から通した縦パスに、MF小川慶治朗(25)が走力を生かして右サイド寄りに抜け出した。鮮やかな速攻がハマりかけたが、前線にいたはずのポドルスキは相手ゴール前にできたスペースに走り込めず、ペナルティーエリアの手前で駆け足のまま。結局小川は角度のない位置からシュートを打つしかなく、好機はあっけなくついえた。

 足元で受けたいポドルスキとスペースを活用したいチーム。目指すスタイルに大きなズレが生じている。試合後に渡辺が「欲を言えばもっとゴール前に入ってほしい」とポドルスキに要求したように、チームにとっては『いて欲しい時に、いて欲しい場所にいない』ということになる。堅守速攻を基盤とした神戸の戦術ではポドルスキにもそれなりの走力が求められてくる。

 一方でポドルスキは決して起用な選手ではなく、自分の欲しいタイミングでボールを受けてこそ能力を発揮する、周囲に生かされるタイプと言える。神戸では『ボールが欲しい時に、欲しい場所(足元)に預けてくれない』ために苛立ちを募らせ、中盤に下がってボールを受けてパスを捌(さば)くが、スプリントが利かないため好機にゴール前に入っていけない。ゴールから遠い位置にいるため相手の脅威にならないという悪循環に陥っている。横浜M戦の試合前、吉田監督はポドルスキと渡辺の2トップに対して「中盤に下りてくるな」と指示を出していたが、後半にはポドルスキがDFライン近くまで下がってくる場面も見られた。

 ポドルスキを生かせる方法はあるのか。ドイツ代表通算49得点のストライカーを起用しない手はない。だが、ポドルスキ中心のチームを作り上げるにはこれまでのスタイルを一新する必要があり、残り11試合では現実的ではない。周囲がポドルスキの要求するレベルに到達することも、ポドルスキ好みの選手を揃えることも、今季中には不可能だ。

 ある選手によると、ポドルスキは「スペースに入って行ける時は入るが、それ以外の時は足元に(ボールが)欲しい」と話しているという。周囲と何度も対話を重ねながら、意思疎通を図っているようだが、ポドルスキ自身も神戸のチームスタイルに一定の理解を示し、歩み寄る必要があるだろう。吉田監督はポドルスキについて「最低限の役割は要求していくつもりだが、個を捨てることはしたくない。彼が生きる方法を考えていきたい」と話した。難解なポドルスキ起用法。“最適解”を導き出すことはできるのだろうか。(デイリースポーツ・山本直弘)

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