【野球】阪神・岩崎、投球原点は甲子園出場監督の教え

 99回目の夏の甲子園へ、続々と出場校が決まる7月下旬。阪神・岩崎優投手(26)はスマートフォンを見つめ、ほほ笑んだ。秋田・明桜が8年ぶり9度目の聖地へ。選手に胴上げされる輿石重弘監督(54)の写真は、左腕を幸せにしてくれた。

 注目すべきは、甲子園出場までの道のり。輿石監督はハローワークの公募を経て、4月1日から同校野球部の指揮を執ることになった。そして、約4カ月で夢舞台へと導いたことが話題になった。前任の山梨・帝京三では現在、ヤクルトで活躍中の荒木が教え子。そんな監督と岩崎は、深い縁で結ばれている。

 さかのぼること10年前。母校・清水東野球部に“仙人”と呼ばれる臨時コーチが現れた。同校の羽根田暢尚監督(当時)と親交があり、実現した数日間の“特別授業”。「大きかったです」という輿石監督との出会いが、左腕の人生を変えた。

 一学年上の投手が多くいたこともあり、当時2年生の岩崎は控え投手。独自の軌道を描く直球は今と変わらず異質だったが、球速は常時130キロ前後。変化球の精度も低く、打ち込まれる試合も少なくなかった。何かを変えないと上にいけない-。そんな時、仙人の指導法が心に響いた。

 「とにかくバント処理の練習を繰り返しましたね。『ボールを捕って投げる』、その動きや形がピッチングにつながるということで。それと、メンタルの重要性。配球についても勉強になりました」

 シャドーピッチングの大切さも説かれ、全体練習終了後の自主練では、とにかく鏡に向かって左腕を振り続けた。高校野球が終わり、国士舘大に進学しても教えは生きた。「今でも大切にしています」。プロ野球選手として活躍する今も、投球の原点はそこにある。

 「ネット、見ました?先生らしいですね」

 8月3日・広島戦(マツダ)。明桜が、甲子園練習で珍しい練習をしたと言うのだ。約30秒間、外野の芝で上空を見つめる“瞑想”を行った後、各ポジションに散らばったという。「空も見ずに帰ってきたらもったいない」-。輿石監督のコメントを読んだ岩崎は、懐かしき母校のグラウンドを思い出していたのかもしれない。

 その日、左腕は延長十回からマウンドへ上がり、2イニングを無失点に抑えた。3連投、2日連続の複数回登板でも気迫で抑えた。ここまで43試合で2勝0敗、防御率2・15(8月9日現在)。虎が誇る中継ぎ陣の一角として、開幕から奮闘し続ける左腕。「まだまだ先はあるので、頑張りますよ」。澄み渡る青空を見上げ、またフッと笑みを浮かべた。

(デイリースポーツ・中野雄太)

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