【スポーツ】「地獄」の連勝街道突き進む内村航平 “解放役”となるのは?

 体操の17年世界選手権代表選考会を兼ねる全日本選手権が行われ、ロンドン、リオデジャネイロ五輪2大会連続個人総合金メダリストで、日本体操界初のプロとして初戦を迎えた内村航平(28)=リンガーハット=が、86・350点で前人未到の10連覇を達成した。内村はこれで08年11月の全日本から約8年半に渡って続く個人総合の連勝記録を39に伸ばした。

 リオ五輪で負った腰痛は回復したが、慢性的な痛みを抱える足首、肩など万全な状態ではない中で迎えた8カ月ぶりの実戦で、過去最高僅差となる0・05点差での勝利。最後の鉄棒の演技後、疲れ切った表情で倒れ込んだ内村からは“不敗神話”継続に本音がこぼれた。「地獄ですよね」。決して本来の強さを見せたわけではない試合内容に「これで負けても悔いはない。負けた方が楽かなと思った」という。しかし、それでも勝利の女神は内村に味方した。

 「ここで勝つと期待に応え続けないといけない。負けたら、『やっと負けることができた』と思って次からもっといい演技ができるんじゃないかと思った」と、重圧から解放されたい気持ちがあったことを吐露した。

 この大会では予選で1位千葉健太(順大)、2位谷川航(順大)、3位白井健三(日体大)、内村と同じ4位タイに萱和磨(順大)と、リオ五輪を経験した“ひねり王子”白井と同じ大学3年生の96年生まれが台頭。内村危うしの機運が高まっていたが、それでも数々の修羅場をくぐってきた王者の底力が違った。

 ただ、内村が初めて全日本を制したのは、19歳の時。20年東京五輪を考えれば、新たなエースの誕生が必要となる時期でもある。試合後、内村は「どうせなら健三(白井)に勝ってほしかった」と、白井に告げたという。白井も「干支が1周する前に、僕らの世代で何とかしたい」と、意気込んだ。

 次戦は5月のNHK杯。絶対王者としての立場は続く内村は「まあ地獄ですよね」と、再びコメントした後、覚悟を決めたように話した。「逆にそれくらい追い詰められた方がいいのかな。それだけ期待に応え続けてきた。これからも若手に示していける選手でありたい」。内村を“地獄”から解放するのは、果たして…。

 ◆内村航平の個人総合39連勝の軌跡

08年全日本学生2位(優勝者・植松鉱治)

  (1)全日本優勝

09年(2)全日本優勝

  (3)東日本学生優勝

  (4)NHK杯優勝

  (5)ジャパンC優勝

  (6)全日本学生優勝

  (7)世界選手権優勝

10年(8)全日本優勝

  (9)東日本学生優勝

  (10)NHK杯優勝

  (11)ジャパンC優勝

  (12)全日本学生優勝

  (13)世界選手権優勝

11年(14)全日本優勝

  (15)NHK杯優勝

  (16)ジャパンC優勝

  (17)世界選手権優勝

  (18)W杯東京優勝

12年(19)全日本優勝

  (20)NHK杯優勝

  (21)ロンドン五輪優勝

  (22)全日本社会人優勝

13年(23)全日本優勝

  (24)NHK杯優勝

  (25)全日本社会人優勝

  (26)世界選手権優勝

  (27)W杯東京優勝

14年(28)全日本優勝

  (29)NHK杯優勝

  (30)全日本シニア優勝

  (31)世界選手権優勝

15年(32)全日本優勝

  (33)NHK杯優勝

  (34)全日本シニア優勝

  (35)世界選手権優勝

16年(36)全日本優勝

  (37)NHK杯優勝

  (38)リオデジャネイロ五輪優勝

17年(39)全日本優勝

※丸数字は連勝回数。(デイリースポーツ・大上謙吾)

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