【野球】G戦士は今…元巨人ドラ1監督 夢は「全国制覇」

 2月中旬、潮風が吹く静岡県静岡市内のグラウンドを訪ねた。「ようこそ」。笑顔で迎えてくれたのは、東海大静岡翔洋高校野球部の原俊介監督(39)。95年ドラフト1位で巨人に入団し、11年間プレー。昨年4月、保健体育の教員として新生活をスタートさせた。

 翔洋野球部は合併前の東海大工、東海大一時代を含め、春夏通算9度の甲子園出場を誇るが、近年は04年以来、聖地から遠ざかる。チーム再建へ力を注ぐ一方、学校の業務にも追われる毎日。「世の中の高校野球の監督って、こんな激務の中よくできるなと思ってしまう」。苦笑いを浮かべ、本音がこぼれる。

 プロ入りは95年。同年引退した東海大相模の先輩、原辰徳氏と入れ替わる形で注目を浴びた。だが、プロの壁に阻まれ、1軍デビューは8年目。看板直撃の特大弾を放ち、ドラ1の輝きを見せた瞬間もあったが、ほぼ2軍暮らしだった。

 06年オフに戦力外通告。「頭が真っ白になった」と振り返るが、翌日から通ったパソコン教室が第2の人生を切り開くきっかけとなった。「プロでの実績がそれほどないから、プラスアルファになるものを身につけなければ、と思った」。

 後藤孝志氏(現巨人3軍外野守備打撃コーチ)の誘いで立ち上げた野球教室で講師を務めながら、08年に早大へ進学し、情報の教員免許を取得。母校・東海大相模で教育実習を受けた際の副校長で、現東海大静岡翔洋の村上英治校長から声がかかり、昨年同校の野球部監督に就任した。

 現役引退後は「苦しみながら、模索しながら生きていた」と言う。人に恵まれ、今の立場がある。ただ、村上校長が教育実習に臨んでいた際の姿勢を評価したように、何事も真摯(しんし)に取り組んできたからこそ、道が開けたのだろう。

 現在、野球部の寮で部員と一緒に生活する。朝6時に起床し、富士山を一望できる三保海岸を寮生と一緒にゴミ拾いをしながら、地域の方々にあいさつ。玄関を整理し、部屋やトイレ、風呂などの清掃もより丁寧に行うよう指導している。

 「このチームに何が足りないかと考えた時、団体生活における意識の当て方が無頓着だと感じた。野球にも通じることで走者の走る傾向、癖、そういうものが全く見えない状態だった。あいさつも出発点で、自分の思いを相手に伝えることが大事だと言っている。人間形成や人間力の向上がテーマです」。

 2軍生活が長かったプロ時代を含め、野球から得た財産が指導方針の根底にある。「試合に出ていない選手の気持ちは本当によく分かる。私生活や授業態度が良くなったという報告を受けたら、翌日の試合に出すということもある。誰にでもチャンスがある」。

 昨夏の静岡県大会では、常葉菊川に準々決勝で惜敗。昨秋は静岡に敗れ、4強止まりだった。「子供たちは負けたら本気で泣く。その姿を見ると、こちらも一生懸命やらないといけない。子供と一緒に夢を追いかけます」。寮内には全国制覇の文字が掲げてある。39歳の挑戦は、まだ始まったばかりだ。(デイリースポーツ・佐藤啓)

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