【芸能】水道橋博士が石原慎太郎・元都知事に“宣戦布告”

 石原慎太郎・元東京都知事が、豊洲問題を巡って小池百合子都知事と公の場での“タイマン(1対1)勝負”を示唆したと報じられた。その2週間前の夜、筆者は、漫才コンビ「浅草キッド」の水道橋博士による石原氏への“宣戦布告”を聞いた。新刊「はかせのはなし」(KADOKAWA)について思いを語る中でのことだ。

 「基本、俺の本は昔のボンクラだった自分に向けて書いてきたけど、この本は初めて女性に向けて書いた。そして、もう一つ言うと“石原慎太郎”に向けて書いている。今年8月には『藝人春秋2』が刊行予定で、石原さんとの蜜月の時期から、ひどいことを言われるようになる過程を書いている。あの人に認めさせる、それだけのものを書き残したい」

 元々、「はかせのはなし」は石原氏に起因して生まれた。「石原さんは、百瀬博教さんの著書『プライドの怪人』(2001年、幻冬舎)での僕の解説文を読んで電話をかけてこられた。『君の文体は三島由紀夫に似ている』と。当時、僕は三島を読んだことがなく、それは完全な買いかぶりだったんだけど、この人に認められたのなら、俺は才能があるのかもしれないと」

 そうした伏線を経て、当時の石原都知事からテレビ番組での共演時に「何か書いてくれと」とオファーされ、09年4月から「広報東京都」でエッセーを連載。宅配される新聞の朝刊に折り込まれる、発行部数400万超のタブロイド紙だった。

 東京マラソン、東京タワー、高尾山、国会図書館、隅田川、スカイツリー、浅草寺、立川談志師匠、フィルムセンター、国立競技場…。東京見聞録に自身の子育てや行政への提言なども絡めた連載は猪瀬直樹都知事の時代も続いた。14年2月、舛添要一都知事への代替わりで連載は終了したが、それ以降の書き下ろし原稿も加えて今回の新刊となった。

 水道橋博士こと小野正芳は10代から反骨のルポライター・竹中労氏に影響を受けてきた。本業の芸人とは別の、まさに“本(ブック)業”においても、人物評伝で作家性を発揮する。浅草キッドの相方・玉袋筋太郎との共著「お笑い男の星座」(01年、文藝春秋)をはじめ、“ソロ”としての前著「藝人春秋」(12年、文藝春秋)は北野武、松本人志という笑いのカリスマ、岡山大教育学部付属中学時代の同級生でもあるロックスター・甲本ヒロトらを描いたルポルタージュだった。

 新著は作風も読者層もそれまでの著書とは違う。東京の街と、そこで生活する家族の話(長男の中学受験や親離れしていく小学生の娘など)を、「初めて」の“ですます体”と一人称の“ぼく”で描いた。「藝人~」がど真ん中への直球だとするならば、「はかせの~」はスローカーブ。どちらも、投球(書くこと)の組み立ての中でつながっている。

 1982年に岡山県から上京。ビートたけしの後ろ姿を追って芸人となり、家族を持って父になった。自己実現の場が東京だった。

 「親との縁を切る覚悟で東京に出てきて、“親子”なんて俺にはないと思っていたのに、自分が親になることに東京で気づく。そういう通過儀礼を経て、物語は繰り返され、(人と人が織りなす)星座はつながっていく。『藝人春秋』もずっとそのテーマで書いていて、今回(はかせの~)は分かりやすく子供や女性にも伝えていく本。これを書かないと、次の『藝人春秋2』に行けなかった。“スローカーブを、もう一球”じゃないけど、こんな球も投げられるんだという自分を見せているつもりです」

 週刊文春の連載が今年5月から再開予定という。「本の世界は自分の中でスターウォーズのような“サーガ”(連綿と続く物語)になっていて、『藝人春秋』があり、この本(はかせの~)があって、次の『藝人春秋2』へとつながっている。週刊文春で始まる連載でも、また、芸人の物語を星座のように描いていくというストーリーができています」

 昨秋から、金髪で“おネェ”キャラを演じ、テレビやツイッターでの発言から“ネット炎上”にもさらされた博士。テレビタレントとして路線チェンジしたのと同様、新著でもイメチェンを図ったかのようにとらえられがちだが、根っこでは一本筋が通っている。

 新著の生みの親であり、ちょうど30歳年上の父親世代である石原氏を越える中身で勝負するという、まさに(精神的な)“親殺し”の物語という解釈でもって、博士の「宣戦布告」と冒頭に記した。その言葉は、くしくも石原慎太郎公式サイトのタイトルでもある。

 (デイリースポーツ・北村泰介)

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