【スポーツ】水球男子代表の切実な現実

 16年リオデジャネイロ五輪の出場権が懸かったアジア選手権で優勝し、1984年ロサンゼルス大会以来32年ぶりとなる五輪出場を決めた水球男子日本代表「ポセイドンジャパン」。帰国会見で明らかになったのは、マイナー競技ゆえの切実な現実だった。

 大会前は約2カ月間家に帰らず、水球漬けの生活を送ってきた選手たちのほとんどは“無職”。海外クラブに所属している選手でも報酬は“お小遣い”程度。水連やJOCなどから強化費の支給を受ける選手もいるが、個人スポンサーなどが付いている選手もほとんどいない。大本洋嗣監督は「五輪に出れば、水球の認知度も高まる。彼らは就職もしていない人間が多い。五輪が終われば、無職になる。ここで顔を覚えてもらえたら」と、雇用企業やスポンサーが増えることを願った。

 選手たちの懐事情は深刻だ。約2カ月の間“拘束”され合宿を行ったのも、単に集中して練習を行うためだけではなかった。水中で絶えず動き続ける過酷なスポーツ。1試合8分×4ピリオド=32分で、フルマラソンよりも消費カロリーが多いという。大本監督は「解放してしまうと、痩せて帰ってくる。JISS(合宿拠点)なら3度しっかりご飯を食べることができるから」と、説明した。

 リオ五輪での目標は「ベスト8」。年末年始は休養期間とし、1月末から再び指導するが、大本監督は目標達成のため「2カ月にするか、半年拘束するか考えたい」と、予選前を超えるハードな合宿を示唆。ゴールキーパー棚村克行(26)は苦笑いしながら「勝つためには何でもやる」と、受け入れる姿勢をみせた。

 主将を務める志水祐介(27)=ブルボン=も、「今は無職です」。所属はクラブチーム。オフの時期はラーメン屋などでアルバイトしているが、水球に打ち込んでいる時期は収入はゼロになる。結婚を考えている交際相手もいるが、状況が状況だけに踏み切れないという。「これを機に環境を変えて行ければ」と、必死に前を向いた。

 女子サッカーのなでしこジャパンや、アイスホッケーのスマイルジャパン、北京五輪当時は“ニート剣士”と呼ばれたフェンシングの太田雄貴など、大舞台での活躍で競技環境を一変させた競技も多い。未来を切り開くための、ポセイドンたちの戦いが始まる。(デイリースポーツ・大上謙吾)

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