内村航平の東京五輪終幕「僕が見せられる夢はここまでです」鉄棒まさか落下で予選落ち

 「東京五輪・体操男子種目別鉄棒・予選」(24日、有明体操競技場)

 男子予選が行われ、鉄棒に絞り、体操ニッポン史上2人目の4大会連続出場となった内村航平(32)=ジョイカル=は、中盤のひねり技で落下し、13・866点の20位でまさかの予選落ち。3大会連続の金メダルは夢と消え、“内村時代”の終焉(しゅうえん)を自ら宣言した。初出場の4人(萱、谷川、橋本、北園)で挑む団体では266・251点で、ライバルの中国、ROC(ロシア五輪委員会)を上回り、1位で26日の団体決勝に進出した。個人総合では橋本大輝(19)=順大=が88・531点のトップで、28日の決勝進出を決めた。

 突きつけられた現実を受け止め、内村は笑った。鉄棒に絞り、究極の1分間を求めて、それを披露するはずだった自国開催の夢舞台。ただ、これまで世界の頂に君臨し続けてきた圧倒的な勝負強さは衰え、マットにたたき付けられた。そして、自身の予選落ち以上に衝撃を受けたのが若き力。全員が初出場の団体メンバーが、内村落下の衝撃をものともせずに堂々の首位通過。描かれた残酷なコントラストに、悟ったように言った。

 「新世代のスターも生まれそう。いや、もう生まれたか、今日。僕はもう主役じゃない。僕が見せられる夢はここまでです」-。

 目を疑う光景だった。冒頭から3つの離れ技を圧巻の高さと精度で成功させた。しかし、直後に車輪をしながらのひねり技で右手が外れて落下。「何やってんだ、バカって。何も言い訳はない」。この瞬間、内村の東京五輪は幕を下ろした。

 リオ五輪後、プロに転向してからの5年は、体操人生で初めて味わう挫折の時間だった。08年から続いていた個人総合の連勝は40で止まり、首、肩、腰に足首と、けがが相次いだ。19年には全日本で予選落ち。「人生で初めてうまくいかなかった」。両肩に打ち続けた注射の数は100本をはるかに超えた。

 葛藤の果てに、鉄棒で生きる道を選んだ。体の負担は減り、演技はキレを増した。選考会では5演技すべてで、リオ五輪以降の世界最高得点15・766点を含め、ハイスコアを並べ続けた。普通に演技できれば、金メダルが取れる状態だった。「もう前みたいに練習してきたことをそのまま出せる能力はないんだなと。大舞台でこそ出せていたのに」と自嘲し、宙を見つめた。

 19歳で銀メダルを獲得した08年北京五輪から13年。ずっと日本の体操を背負い続けてきた。自身の演技を終え、少しだけ気持ちを整えた後、すぐに団体チームに合流し、演技を見届けた。そして、トップ選手としての自身の引き際を悟った。「体操をするのはもういいのかなと思ってしまった。主役は彼ら。自分はいらないじゃんって」-。引退は否定した。「引退表明する必要はあるのか?と。伊調(馨)さんも辞めていないし、僕も永遠に辞めないかもしれない」。ただ、若き背中を見つめ、言った。「ここからはあいつらがあいつらのシーンを紡いでいく」-。すべてを託したように笑った。

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