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高藤直寿ニッポン金1号 リオの雪辱果たし天才歓喜の男泣き 野村以来4大会ぶり戴冠

 「東京五輪・柔道男子60キロ級・決勝」(24日、日本武道館)

 男子60キロ級決勝で高藤直寿(28)=パーク24=が楊勇緯(台湾)を破り、日本選手団の金メダル第1号を獲得した。この階級を制するのは野村忠宏が1996年アトランタから04年アテネまで五輪3連覇して以来で、4大会ぶりに王座を奪還した。同時に、競泳や体操で日本のエースが次々と敗れる波乱の幕開けとなった東京五輪第2日で、お家芸が聖地の日本武道館に日の丸を掲げてみせた。

 胸がすくような豪快さはない。地味かもしれない。それでも、これが金メダリストになるために高藤が選んだ柔道だった。「渋い試合をしたな。絶対にテレビで見ている人はわからないだろうなと。でも、あれが僕です」。決勝。相手だけでなく審判の傾向まで研究を重ね、計算し尽くした“柔道脳”で相手の反則を引き出し勝ち名乗りを受けると、かみしめるように右拳を突き上げた。「ヤバイ。現実とは思えないっす。重いです」。まばたきしながら、夢見心地で大会第1号となった金メダルをさすった。

 5年前の屈辱が原動力だった。リオ大会では優勝候補と目されながら準々決勝敗退。銅メダルを死守したものの「今までの人生が否定されたような気がした」。当時から付け人を務めている伊丹直喜さんは、目の前で泣き崩れる高藤に声を掛けられなかった。「表彰式に出て、取材は堂々と受けていたが、(裏で)土下座のように泣き崩れて。何も言えなかった」(伊丹さん)。帰国後も報告会などのイベントでは銅メダリストはいつも後列。前面に出る金メダリストの“背景”と化し、辱めのように感じた。

 「どうせ阿部一二三の記事ばかり書くんでしょ?」。高藤がふと唇をとがらせたこともあった。自身は悔しさをバネに17、18年世界選手権で連覇したが、東京五輪に向けてニューヒーローを求めるメディアは華やかで豪快な若手を大きく取り上げる。結果を出しても自身の露出は少ないことに嫉妬心をのぞかせる場面もあった。

 それでも高藤が畳の上で求めたのは、地味でも勝ち切るための熟達した柔道だった。以前はアクロバティックで攻撃的な柔道を志向したが、安定感を欠く。観衆を魅了しても負ければ意味がない。リオ五輪以降は基本に立ち返って釣り手と引き手を持つオーソドックスなスタイルに回帰。「泥臭くてもいいので金メダルを取りたい。豪快とは言えないが、深みのある柔道で」。屈辱を糧に、渋くても確実に勝つ柔道をつくりあげた。

 答え合わせの日に真骨頂を見せた。準々決勝から3試合続けて延長戦の激戦となったが、徹底して相手の長所を消して泥臭く勝機を見いだし続けた。井上康生監督は「駆け引きの天才。周到な準備があった」とたたえた。

 畳から降りる際には「体が勝手に」動き、正座して座礼。自宅に飾っていた前回の銅メダルは悔しさの象徴だったが、「(金メダルを)銅メダルの前に置いてやろうと思います」(高藤)。コロナ禍開催の異例の五輪で突破口を開いたのは、5年間執念を燃やし続けた男の雪辱劇だった。

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