内村、絶望的点差から奇跡の大逆転!接戦制し個人総合連覇達成!

 「リオ五輪・体操・男子個人総合・決勝」(10日、リオ五輪アリーナ)

 ロンドン五輪金メダリストの内村航平(27)=コナミスポーツ=が92・365点で、68年メキシコ、72年ミュンヘン両五輪での加藤沢男以来44年ぶり史上4人目の2連覇を達成した。トップと0・901点差で迎えた最終種目の鉄棒で、着地まで完璧な演技を見せ、首位だったオレグ・ベルニャエフ(22)=ウクライナ=を、0・099点逆転した。内村はこれで08年11月から続く個人総合の連勝記録を38、世界大会(五輪・世界選手権)の連覇を8とした。

 重力、遠心力、床からの反発力、そのすべての力を一瞬にして無に変え、吸い付くようにフロアに降り立つ。その一歩を動かないために、何千回、何万回、何十万回と血のにじむような努力を積み重ねてきた。内村が歩んできた体操道の“真髄”が、五輪史上に残る大逆転劇を生んだ。

 「正直、今回ほど負けると思った試合はない。ただただ良かったです」。試合後、吐き出した言葉が死闘を物語った。内村がいつものように高い精度で演技をこなしても、ベルニャエフはより高難度の構成を力強く演じていく。5種目目の平行棒を終えた時点で、首位のベルニャエフとは0・901点差。7連覇中の過去の世界大会を含め、内村が最終種目を前にリードを許したのは初めてだった。

 勝利の女神を振り向かせたのは着地だった。内村が柔らかくピタリと止めたのに対し、最終演技者のベルニャエフは一歩前に動いた。最終的な得点差はわずか0・099点。逆転での2連覇を達成した瞬間、内村は両腕を握りしめ咆哮(ほうこう)した。

 2日前に悲願だった団体での金メダルを獲得。予選、団体決勝とも全6種目をこなし、心も体も悲鳴を上げていた。「団体金をとって燃え尽きそうになった」。それでも何とかもう一度気持ちを奮い立たせた。「今日は1種目も1秒も気持ちを緩めなかった」

 これまでほとんど執着を見せてこなかった個人での戦いに執念を見せたのには、ある理由があった。内村はこの大会を、こだわり続けてきた6種目をこなすオールラウンダーとしての集大成と位置づけていた。だから4年後の20年東京五輪に向けて、後輩たちに見せておきたかった。日本の体操を背負う意味を-。「あとは僕がこれだけ示した姿から、どれだけのものを修得できるかだと思う」。その勇姿を見届けた白井健三は「こうなりたいと本気で思った」と、熱くつぶやいた。

 「絶対に出たい」と話す東京五輪までにはスペシャリストへの転向を思い描く。まだ完全に個人総合から撤退することを決めたわけではない。ただ、激闘を終えて内村は「負けた方が楽だったかな。でも、もう二度とやりたくないというのが本音」と、どこかスッキリしたように笑った。体操ニッポンの未来のために、“絶対王者”は“絶対王者”であり続けた。

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