夢つなぐ中島の同点スーパーミドル弾 負ければ1次L敗退も

 「リオ五輪・サッカー男子・1次リーグ、日本2-2コロンビア」(7日、アマゾニア・アリーナ)

 男子の1次リーグ第2戦が行われ、B組の日本はコロンビアと2-2で引き分けた。負ければ敗退が決まる一戦で、1点を追う後半29分にMF中島翔哉(21)=FC東京=が起死回生の同点ゴールを決めた。勝ち点1の日本は自力突破が消滅したものの、10日の第3戦でスウェーデンに勝ち、コロンビアが引き分け以下なら準々決勝進出が決まる。引き分けても、コロンビアが敗れれば突破の可能性は残る。

 希望をつなぐ弾道が、クロスバーをはじいてインゴールで跳ねた。1-2の後半29分、中島が「GKが前に出ているのは分かっていた」と、狙い澄ました同点ミドルを沈めた。日本を敗退の危機から救い出し、準々決勝進出の可能性を残した。

 スタンドには母こずえさん(46)の姿もあった。初戦の後に「今度はもっと頑張るから」と話していたといい、約束を果たした息子を目の前に「入るとは思わなかった。うれしくて涙が出ました」。必勝祈願などで有名な香取神社のお守りを握り締め、目を潤ませた。

 母子二人三脚で歩んできた。中島が小学校に入学した頃、両親は離婚。東京都八王子市の都営団地に2人で引っ越した。いとこに誘われ、松が谷FCでサッカーを始めたが、最初は泣きながらボールを蹴っていたという。

 いつもサッカーボールが一緒だった。自宅ダイニングに小さなゴールを置いて、愛犬相手にドリブルを繰り返し、夜はボールを抱え、犬とともに眠った。食事の時もトイレの時も、学校の教室でさえボールを離さなかった。

 昼夜を問わず働き、生活を支えてくれた母への感謝は尽きない。プロ入り後は毎月仕送りを続け、誕生日や母の日には必ずプレゼントを贈る。J2富山時代には、車で5、6時間かけて会いに来てくれた母に、自ら天ぷらを揚げて振る舞ったこともあった。こずえさんは「愚痴も文句も言わないし、本当に優しい子」と振り返る。

 6月末には母に内緒で都内に一戸建てを買い、プレゼントした。初めてのブラジル留学時、家族のために家を建てた十代のブラジル人の話を知り「自分のわがままを聞いてもらってきたから、家を建ててあげたい」と、温めてきた思いを実現した。入居は9月予定。こずえさんは「こんな親孝行、夢みたい。ケガのないようにサポートしていきます」と幸せをかみしめた。

 次戦も息子の戦いを見届ける。中島は「僕に苦労していると感じさせないように頑張ってくれた。少しでも恩返しできれば」と誓う。互いを思いやってきた2人。こずえさんは穏やかに笑う。「つらいこともいっぱいあったけど忘れちゃった。今が幸せだから」-。

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