【集中連載】オレが村田だ!(上)

 ロンドン五輪のボクシング男子ミドル級で、村田諒太(26)=東洋大職=が、東京五輪バンタム級の桜井孝雄氏(故人)以来、日本人48年ぶりの金メダル獲得という金字塔を打ち立てた。五輪閉幕後の余韻が残る今、栄冠の背景と村田の登場によって変わる日本ボクシング界の未来を検証する。

 栄冠から一夜明けて迎えた五輪閉会式。英国のロック音楽が鳴り響く“夏フェス”と化した華やかな空間で、村田は誇らしげに胸の金メダルを光らせながら、時おり笑みを浮かべて歩を進めた。その表情は大仕事をやり終えた達成感に満ちていた。

 村田の金メダルは「48年ぶり」という時間的価値だけではない。プロ、アマとも日本人にとって大きな壁であった世界のミドル級の頂点を極めたという“重量的”な面での功績は奇跡といってもいい「事件」だった。ミドル級は75キロ級。世界で最も選手層の厚い階級だ。村田は陸上の短距離走や競泳の自由形など日本人にとってハードルの高い競技で金メダルを取ったに等しい。

 日本代表を率いた山根昌守チームリーダー(47)は「ミドル級ではガードの上からでの打撃でも相当な破壊力がある。肉体的に受けるダメージは大きいが、村田には世界に負けない精神力、心技体と運があった。世界選手権で取った銀を五輪で金に変えるなんてすごいこと。彼は日本の財産です」とたたえた。

 当然、日本のプロボクシング界も熱視線を注ぐ。村田は高校時代から「プロの誘いはあった」と明かすが、この日のためにアマに徹した。大願成就を遂げた今、プロ転向が再浮上。大手ジム会長は「プロの世界ランク上位の実力がある」と将来性に太鼓判を押した。

 だが、村田は一夜明け会見でプロ転向の可能性について「ほぼない」と否定。「アマチュアがプロの下にあるわけではない」と生涯アマを宣言した。3つあった選択肢は2つに。引退して指導者になるか、4年後のリオデジャネイロ五輪で連覇を目指すか。あるいは「ほぼ」という表現から、どんでん返しのプロ転向も残るのか。(つづく)

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