夢を託し去った愛媛・吉村

 11月29日に行われたJ1昇格プレーオフ準決勝。レギュラーシーズン5位に食い込んだ愛媛は4位・C大阪を相手に果敢に戦ったが、ゴールを奪えず無念のスコアレスドローで敗退が決まった。そして、この試合を最後に14年間の現役生活にピリオドを打った男がいる。ボランチとしてチームを支えたMF吉村圭司(36)だ。

 「このクラブのユースで育って、引退すると決めた年にこういう場所に立てた。何か運命的なものを感じるし、このチームで終われたことに感謝したい」。出番のないままベンチで終了のホイッスルを聞いた吉村は試合後、穏やかな笑みを浮かべてそう語った。

 高知県出身で愛媛ユース2期生でもある吉村は、愛知学院大卒業後の2002年にJ1名古屋に入団。ボランチとして台頭し、ストイコビッチ監督時代の10年にはクラブのJ1初優勝に貢献した。名古屋で11シーズンを過ごしたあと、13年に愛媛に“復帰”。キャプテンを2年間務め、持ち味の冷静なプレーとハードワークでチームを引っ張った。

 今季は故障に悩まされ、開幕から長く戦列を離れた。それでも黙々とリハビリに取り組み、ピッチの外から仲間たちを鼓舞し続けた。

 故障が癒え、試合に復帰したのはリーグ第40節・京都戦。チームは昇格プレーオフ進出争いの真っただ中だった。よりコンディションのいい若手をベンチに入れる選択肢もあった中、木山隆之監督(43)は「昇格に挑戦する中で絶対に必要となる選手」と吉村をベンチに入れ、ピッチに送り出した。最終節・徳島との“四国ダービー”では後半39分に交代出場し、チームは3-0で快勝。吉村は試合後に行われた引退セレモニーでホームのサポーターへ感謝の思いを語り、プレーオフでの奮闘を誓った。

 昇格は果たせなかったが、チームは昨季19位からの躍進でサポーターを喜ばせた。最後の戦いを終えた吉村は「あと一歩、何かが足りなかった。来年、またトライしてほしい」と仲間たちにJ1昇格の夢を託した。

 今後は指導者の道に進む予定で「サッカー選手になりたいという子供たちの夢をかなえてあげられるような仕事をしたい」と話した。そして最後に「違う形でまた、このチームに貢献したいですね」と吉村。オレンジ色のサポーターをワクワクさせるような言葉を残して、いぶし銀のボランチはピッチを去った。(デイリースポーツ・浜村博文)

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