【W杯コラム】W杯は保守的

 最新の戦術と新しいスターの登場。4年に一度開催されるW杯は、世界中のクラブが新たな商談をまとめるためのサッカーの見本市と表現されることが多い。ただ、この大会は「最新」を謳うものの、過去のデータを見る限り、かなり保守的な記録しか残していない。

 本田圭佑や長友佑都がメディアを通して「優勝を目指す」と国民に発信する目標。確かにこのような気持ちでやらなければ国の威信を背負ったW杯での成功は望めない。その選手たちの意気込みに水を差すようで悪いのだが、過去19大会を振り返るとこのような記録が残っている。外国人監督が率いて優勝したチームは、いまだかつて1チームもない。

 イタリア人監督アルベルト・ザッケローニに率いられた日本代表がW杯を制する。そんなことがもし起きてしまったら、それはどれほど素晴らしいことだろう。しかし、冷静に考えれば現実味はない。確かにまだ大会が始まっていないわけだから現時点での可能性はゼロではないのだが。

 ただ個人的に思うのは、今大会の日本は十分にサプライズを巻き起こす可能性を秘めているチームということだ。ここ20年の日本の急激な進歩は、これまでの世界サッカーの常識をある意味で覆してきた。

 決勝トーナメントに進出すれば歴代優勝国3チームが同居するD組との対戦となる。周囲の予想では「ここは勝てないだろう」という声が多い。ただ、3カ国と連戦するわけではない。1カ国を破ればいい話だ。それはベストのパフォーマンスを発揮したときの現在のチームからすれば十分に可能。前回大会のベスト16を上回る勝機は確実にある。

 その目標を達成するための最大のポイントは、初戦だろう。前回の南アフリカ大会を見るまでもなく、初戦を落としたチームは10チーム中優勝したスペイン以外、すべてグループリーグで敗退している。その意味でザックジャパンは、持てる力のすべてを6月14日のコートジボワール戦に注がなければいけない。

 

岩崎龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

 サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続となる。

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