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「天皇賞前日に水をまいた」説の真相

 天皇賞・春を制したゴールドシップ(中央)
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 「JRAは天皇賞前日に水をまいた」-。レース翌週のトレセンでは、この件が関係者内で話題となった。

 事はゴールドシップがG1・6勝目を挙げた5月3日の天皇賞・春にさかのぼる。これまでの高速馬場が一転し、水分の含んだ状態だったとレース後のジョッキーが口にした。雨が降っていなかったにもかかわらず、である。重い馬場を得意とするゴールドシップにとっては明らかにプラス。「水をまいたなら、言ってほしかったよ」という馬券購入者の声を、記者も実際に聞いている。

 「夕方から夜中までまきっぱなし。あれじゃあ、水分が残るに決まっている」「週の半ばならいいとして、土曜夜に散水して人為的に馬場を変えるのはいかがなものか」とは、トレセンで耳にした関係者のコメント。大半は批判的な意見であり、またその言葉を借りてJRAを叩く記事も目にした。

 一方でJRAサイドの見解を述べたマスコミは、記者が確認した限りではゼロ。まずは当事者に詳細を聞くのが筋でもある。京都競馬場の馬場造園課・森本哲郎課長は記者の問い合わせに対して次のように回答した。

 「3回京都に関しては例年、月曜から土曜まで毎日散水するケースが多いです。晴れている時はほぼやります。基本的には夕方5時から1カ所につき10分間、芝コースを1周で4時間弱。葉が一番育つこの時季は水分がどんどん蒸発し、水をまかないと芝が乾燥して枯れ死んでしまう。レース前日にまかないと、それこそ根こそぎもっていかれますから」

 要は今回の散水は珍しいことでも何でもなく、天皇賞・春の2日前にあたる金曜夜も同量の散水を実施した。ではなぜ、このような問題が起こったのか。「芝の含水量は朝5時半に確認しています。天皇賞当日は、むしろ土曜の朝より水分が抜けていたほど。ただその後の天気がわれわれの見込みとは違った。晴れ予報でしたが、陽が出ませんでした。天皇賞は決してあの芝状態を目標としていたわけではありません」

 予報と大きく異なる天候が影響し、結果的に水分が残ってしまったという。また深夜の散水については「午後10時半から夜中の1時まで、障害コースで行いました。調整ルームでは音しか聞こえないので、そういった意見もあったのだと思います。この点は騎手の方の睡眠を妨げる恐れもあり、反省すべき点だと考えています」と述べた。

 JRAは毎週、各競馬場の馬場情報をホームページで公表。ただ金曜昼以降は更新を行っておらず、金曜・土曜夕方の散水については確認する機会がない。「京都競馬場の一存では決められませんが、隠す必要はない。発表が途中で止まっていることもまた反省すべきでしょう」と改善の姿勢を示している。

 散水の有無はJRAもジョッキーの意見を参考にしつつ、あくまで双方にとってベストな形を模索しながら行っている。決して一方的、かつ独断的なものではない。冒頭に述べた意見以外に「JRAもいい馬場をつくりたいという気持ちを持っているのは分かる」と理解を示すジョッキーがいたのも確かだ。いくつかの問題が浮き彫りとなったこの一件を機に、より良い方へ向かうことを望みたい。

 最後にひとつ、強く言っておきたいことがある。記者はJRAの擁護派でもなければ、回し者でもない。むしろ保守的な姿勢、時に隠ぺいとすら勘ぐってしまうほど説明不十分なケースにイライラし、8対2の割合で批判的な記事を書いてきた。ただ今回残念に思ったのは、当事者に事実関係を確認することなくウワサ話をもとに、まるでJRAに悪意があったかのように報道されている記事があまりにも多過ぎたことだ。JRAだけではなく、われわれマスコミも“信用”という言葉の重みをいま一度考えるべきではないだろうか。無論、自戒の念を込めて記した次第である。(デイリースポーツ・豊島俊介)

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