大谷「50-50」達成、マイアミの歴史的な夜 3打席連発&2盗塁で「51-51」、最多の記事本数 担当記者が振り返る
ドジャース・大谷翔平選手(30)を取材してきたデイリースポーツ大リーグ担当・小林信行記者が、昨季の心に残る出来事を思い返し、二刀流復活にかける今季を占う「大谷新伝説へ」。第2回は、史上初の「50-50」を達成しただけでなく「51-51」にまで伸ばす形となった、歴史的なマイアミでの夜を振り返る。
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カタカタカタカタ、ターン、カタカタカタカタ、ターン…。記者席に文字キーとENTERキーを交互にたたく音が響く。
24年9月19日、フロリダ州マイアミ、ローンデポ・パーク。タイピングマシンと化した記者たちは、息つく間もなく日本へ記事を送信し続けた。今でも断言できる。この日行われたマーリンズ-ドジャース戦を取材するために集結した日本の記者たちは、世界で最も多くの記事を書いた、と。
大谷は9月17日の試合で48号を放ち、翌18日には49個目の盗塁を記録。MLB史上初となる「50-50」の偉業を目前にしていた。歴史的瞬間。心の準備はできていたが、さすがにこの展開は想像できなかった。
第1打席で右中間フェンス直撃の二塁打を放って好スタートを切ると、三盗を決めて早々に50盗塁に到達する。第2打席は適時右前打からの二盗。勝てば自身初のプレーオフ進出が決定する試合。貪欲に次の1点を取りに行った。
第3打席で左中間へ2点適時二塁打を放つと、続く打席で49号2ランを右中間席へたたき込む。観衆は1万7560人。空席だらけの敵地がホームと化する。5打席目、逆方向への打球が左翼席に飛び込んだ瞬間、ドーム球場が爆発した。
どよめきと歓声。見る者の心を揺さぶる圧巻のパフォーマンスだった。しかし、歴史的偉業の余韻に浸る余裕はなかった。一分一秒を争うネットニュースの世界。1打席ごとに速報を出さなければならないため、震える指でひたすらキーをたたき続けた。
八回で11点差がついた試合。大谷は九回の第6打席でマウンドに上がった野手からも51号3ランを放った。自身初の3打席連発で歴史的試合を締めた。6打数6安打、3本塁打、10打点、2盗塁。試合後に大谷が「自分が一番びっくりしている」と振り返った試合は、MLB公式Xの「2024年NO・1プレー」に選ばれた。投稿された1分29秒の動画には「唯一無二の選手、唯一無二のシーズン!」との一文が添えられた。
午後4時40分開始の試合。大谷の会見後に新たな速報を出した後、宿舎に戻り、最後の朝刊用原稿を送った時には日付は変わっていた。この日送った記事の数は、記者人生最多の13本だった。





