奈良ややこしすぎ…トップに災難続き、前任は“スルー死”→主人公どうなる?【豊臣兄弟】
豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。
9月27日放送の第37回「秀長の国」では、秀長が与えられた大和国で、なぜ興福寺がこれほど力を持っているのか? という状況を振り返るとともに、今回で退場となった蜂須賀正勝についても触れていこう。
■ 郡山城を築き始める秀長…第37回あらすじ四国攻めを終えて、関白宣旨を受けた羽柴(豊臣)秀吉(池松壮亮)は、新たな国割りを行った。大坂城周囲の領土を小一郎や羽柴秀次(山田涼介)などの身内で固めて、畿内の支配を盤石にするのが狙いだった。
さらに、長年兄弟と一緒に戦ってきた蜂須賀正勝(高橋努)は、四国攻めの功績で阿波国を授けられることになったが、正勝はそれを息子に譲るよう申し出る。正勝は2人とここまで来れたことを幸せだと伝え、半年後に逝去した。
一方で、小一郎は、松永久秀(竹中直人)も手こずった大和国の支配に向けて、かつて筒井順慶(永沼伊久也)の拠点だった郡山に城を築こうとするが、石垣に使う石がなかなか集まらず、石仏や灯籠などを徴収。
小一郎が、石垣となった地蔵に祈りを捧げていた場所に、資材用の足場が崩れる事故が起こるが、慶(ちか/吉岡里帆)に呼び出されて間一髪で難を免れる。慶が持ってきたのは、神社の御札が入った秀吉の書状だった。
■ 奈良のラスボス「興福寺」…なぜ“鬼門”?今回の国割りで、大和国という畿内ド真ん中の国をもらった秀長。あの松永久秀も死ぬ間際までこだわりつづけ、誰もがもらって羨むような国・・・かと思いきや、奈良時代からの寺社勢力がめっちゃくちゃ幅を利かせている、とんでもなく面倒な国だった。
先に秀長がもらった紀伊国も、なかなか訳ありな国だったけど、ある程度力を押さえつけてから統治体制に入った紀伊と違い、大和国は寺社・・・特に興福寺が強い権力をキープしたままで、攻略難易度はさらに倍! という感じだったのだ。
興福寺がここまで大和の実権を握れた理由は、2024年の大河ドラマ『光る君へ』の時代までさかのぼる。
平安時代中期に、自分の田畑を有力貴族や寺社の「荘園(私有地と考えてもらえれば)」ということにして、国に年貢を納めるのを回避する「荘園制」が誕生。藤原家の氏寺の興福寺にも「寄進」が行われ、経済的にも潤うことに。さらに、自衛と称した武装化も進み、武士にも負けない武力を有するようになる。
鎌倉・室町のどちらの幕府でも守護となる武士が入ることはなく、興福寺の自治領のような状態がつづいた大和国だけど、戦国時代に再び武士との対立が激化。
やがて、筒井順慶を生んだ筒井家が、興福寺の僧侶兼戦国大名のような立ち位置に浮上することになる。そこから、織田信長(小栗旬)以前に天下人に近い位置にいた三好長慶が台頭すると、松永久秀が大和平定を託されて、寺社勢力&筒井家と一進一退の攻防を繰り広げた。
そして、順慶が信長の家臣となり、大和国国主の座を正式にゲット。なにかと言葉が足りない(笑)小栗信長は、久秀ではなく順慶を選んだ理由を「若いから」と述べていたけど、順慶の方が寺社との争いを避けられるのが、本当の理由だったと思う。
順慶は本能寺の変のあとは、早い段階で秀吉に従うけど、実は小牧・長久手の戦いのあとに、36歳の若さで病没している。ナレ死ならぬ「スルー死」されるとは、なんとも不憫な・・・。
というわけで、今回秀吉が筒井家を伊賀に転封し、秀長に大和国を任せたのは、興福寺とズブズブの関係にある筒井家では、2人が目指す「新しい国造り」はできないと考えてのことだった。
その後、筒井家はお家騒動などもあり、豊臣家滅亡よりも前に断絶。久秀の悲劇的な最後や、秀長も短命だったことを考えると、大和国というのは武家にとっては、やっぱり「鬼門」だったのかもしれない・・・。
■ 天然の“ヒロイン的存在”、惜しくも退場そして、この第37回の大きなトピックといえば、兄弟たちがまだ織田家の足軽に過ぎなかった頃から行動をともにして、秀吉の奇跡の出世を支えてきた蜂須賀正勝の退場だろう。
これまでの大河に出てきた蜂須賀正勝(小六)は、『秀吉』(1996年)では元プロレスラーの大仁田厚が演じるなど、荒武者として描かれることが多かった。しかし、実際の正勝は、交渉術に長けている、知将の面も大きかったことがわかってきている。
『豊臣兄弟!』で高橋努が演じた正勝は、脳筋なところがありつつも、意外なほどナイーブで情に弱いという、非常に人間味あふれるキャラクターとなった。
特に竹中半兵衛(菅田将暉)におもちゃにされたり、「城主になりました~」ドッキリに引っかかったりという愛らしい面がフューチャーされ、吉岡里帆に「ヒロインを取らないでください!」と言われるほどの愛され&癒しキャラになるだなんて、最初の頃に誰が想像しただろうか。
そう考えると『豊臣兄弟!』での蜂須賀正勝は、いろんな意味で「脱力させる」役割を担っていたように思える。なにかと焦りや不安を抱えがちな兄弟たちを、冗談も交えて励ます。軍議でちょっとトボけたことを言って、周囲からツッコミを受けてなごませる。
その場の雰囲気を直感で察知して、張り詰めた空気をフッとゆるませるという才能(それは各種交渉でも役立ったはずだ)があったからこそ、兄弟たちに重宝され、阿波一国をもらうほどの存在になれた・・・という解釈なのだろう。
憎まれ役から頼れる上司まで、様々な役柄をいぶし銀で演じてきた高橋努の代表的な仕事になることは間違いなしの蜂須賀正勝。
史実通りの退場は仕方ないと言えるのだが、天下取りの一歩手前という、兄弟たちが一番イケイケドンドンな姿だけを見てこの世を去ることができたのは、ある意味幸せだったのかもしれない。いや、正勝がもう10年長く生きていたら、秀長の代わりに秀吉のブレーキ役になれたかもしれないが・・・。
ちなみに、このあとの蜂須賀家は、跡を継いだ息子の家政が「関ヶ原の戦い」では東軍に付いて、家を存続。明治維新も乗り切って、現在までつづいている。
そして、昨年の大河ドラマ『べらぼう』で、生田斗真が一橋治済と二役で演じた斎藤十郎兵衛は、蜂須賀家お抱えの能役者だった。こういう形で、蜂須賀家が2年連続で大河ドラマで重要な役割を果たすとは、あの世の正勝も照れながら喜んでいそうな気がする。
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大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。10月4日放送の第38回「和を以(もっ)て、大和をなす」では、秀長が郡山の商売を活性化しようと奮闘する姿と、秀吉が新しい「氏」を検討するところが描かれる。
文/吉永美和子
(Lmaga.jp)
