映画「黒牢城」と完全一致シーンも!「戦国一の卑怯者」逃亡後、史実はドラマより地獄【豊臣兄弟!コラム】

豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。

6月21日放送の第24回「軍師官兵衛!」では、秀吉&秀長の播磨攻略ミッションの終了を告げる、2つの戦いが登場。主君の覚悟がまったく違ったその結末の詳細と、有岡城攻めの副読本となりそうな、現在公開中の映画も紹介する。

■ 救出された黒田官兵衛が進言…第24回あらすじ羽柴(豊臣)秀吉(池松壮亮)が総大将を務める三木城攻めは、長期に渡る兵糧作戦が効いて、乱心する兵も現れていた。有岡城を落とし、三木城攻めに加わった織田信忠(小関裕太)は、父・信長(小栗旬)に習って皆殺しにすることを命じる。

そこに有岡城の幽閉から救出された小寺(黒田)官兵衛(倉悠貴)が現れ、三木城城主の別所家は播磨で慕われており、力で落とせば播磨の民の心は手に入らないと、必死で寛大な下知を求めた。

信忠は判断を秀吉に預け、三木城は無血開城を目指すことに。官兵衛は、竹中半兵衛(菅田将暉)に代わって軍師として秀吉たちを守ることを誓い、兄弟たちも改めて仲間として迎え入れた。

そして、官兵衛の調略で、別所側の兵を味方に付け、三木城の実権を握る別所賀相(田中美央)を退けることに成功。当主・別所長治(下川恭平)は、秀吉の申し出を受け入れ、自分が切腹をすることと引き換えに、残った人たちの命を救った。

■ 「戦国一の卑怯者」荒木村重、逃亡後の末路秀吉と秀長を心身ともにズタボロにしながらも、経験値はグーンとアップさせた播磨攻め。その総仕上げとも言えるのが、有岡城と三木城の攻略だったが、どちらもかなり過酷な結末が待っている戦でもあった。

この2つの戦いの終わりを同時にサクッと見せたのは、尺の都合も合ったかもしれないけど、あんまり詳しくお伝えすると人間に絶望を感じる夜を過ごすことになりそう、という制作側の配慮もあったかもしれない。

有岡城の戦いは、実際に荒木村重(トータス松本)が逃亡したために終結。「戦国一の卑怯者」とまで言われる村重の不可解な行動の理由は、今もはっきりとはしていない。

今回のように命が惜しくなったという説もあるし、本気で毛利に救援を申し出るために、目立たないように一人で城を抜け出したという、あくまでも「戦略的逃亡」だったという説もある。

ただ、代わって城を守れる人材がいなかった有岡城はすぐに落ち、何百人もの身内や家臣が残酷な方法で粛清され、ついでに荒木家家臣をかくまった高野山の僧侶たちまで巻き添えで大量殺戮されたわけだから、戦略だったとしても最上級の悪手だった。

このあとの村重は、摂津国内のいくつかの城で抵抗をつづけたものの、結局は毛利家に落ち延び、信長の死後は堺で茶人として余生を過ごすことになる。最愛の妻を始めとする大量の命を犠牲にして、一体どのような気持で茶に向かっていたのか。その壮絶なサバイバー・ギルドも、描かれることになるだろうか・・・?

■ ドラマではマイルドに…地獄絵図の三木城そして、三木城の籠城戦は、結局2年近くつづいた。村重がいる間は、摂津国から兵糧が流れていたが、有岡城が落ちると補給が絶たれ、城内は「三木の干殺し」と呼ばれるほどの地獄絵図となったそうだ。

城の中には兵士だけでなく、近隣の非戦闘員も大勢含まれていたという。最後の方で完全に生気を失った兵士たちが映っていたけど、あれはかなりマイルドな描写だろう。

結局、長治とその家族が切腹をすることで、三木城はようやく秀吉たちの手に落ちた。長治は「自分の命で大勢の人が救われるのだから悔いはない」という意味の辞世の句を遺していて、三木城跡にはこの歌碑が設置されている。

地元の人たちは今も長治に感謝しているというから、村重と違って良い選択ができたと見ていいだろう。最後は老害状態となっていた賀相は、この期に及んでも抗戦を主張して、家臣に殺害されたと伝わっている。

この後の秀吉は三木城の経験に習い、城攻めの際にむやみに戦いを重ねるのではなく、周囲の砦を落として籠城戦に持ち込んでから、いろんな手段で食料の流通手段を封鎖して、食糧不足で敵が弱った頃に、城主に切腹を迫って城を手に入れる・・・という戦術を多用するようになる。多少時間はかかるけれど、味方の兵力を温存したまま確実に相手を降参させることができるわけだ。

敵方は殺されるより辛い飢餓の苦しみを受けるものの、仲間を死なせることはほぼないというのが、とにかく身内は大事にする秀吉&秀長らしい戦い方だろう。

しかも冒頭で描かれた、子飼いの武将たちも交えてどんちゃん騒ぎをして、敵をあおる時間がなんとも楽しそうで、それも派手好きな秀吉好みだったのかもしれない。

■ 映画『黒牢城』と見比べる、菅田将暉も登場村重が逃亡をはかる前に、地下牢に幽閉している黒田官兵衛にアドバイスを聞きに行くという描写があった。6月19日に公開されたばかりの映画『黒牢城』を観た人は、もれなく既視感を感じたに違いないし、実際SNSも一斉に「黒牢城だー!」と盛り上がっていた。

というのもこの映画は、まさに有岡城の戦いが舞台になっていて、まるで示し合わせたかのように、この第24回と状況がかぶっているのだ!

籠城戦ということで、城が丸ごと密室となった有岡城内で起こる怪事件を、地下牢に幽閉された黒田官兵衛(演じるのが先週まで竹中半兵衛だった菅田将暉というのがすごい偶然)が解決するという内容。

もちろん中で起こる事件自体はフィクションだけど、登場人物はほぼ全員実在の人物だし、毛利家や雑賀衆などとの関係や、変化していく戦況なども、かなり史実に則って描かれている。

そういうわけで、ドラマでは豊臣兄弟側から見た有岡城の戦いが描かれていたけど、一方有岡城内ではどうなっていたか? という疑問を補完できるという思わぬメリットがある。

そして、荒木村重やだし(映画では千代保)のキャラクターと、逃亡の理由もなかなか対照的なので、ドラマのファンも観に行ってみることをオススメする。米澤穂信の原作小説(KADOKAWA刊)もぜひ。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。6月28日放送の第25回「変事の予兆」では、安土城落成の宴で開かれた相撲大会で、負けた家臣たちが追放されることに。そのなかに秀長の舅・安藤守就(田中哲司)が含まれていたことで、その真意が明かされる様を描く。

文/吉永美和子

【次回予告】不穏すぎる…「恐怖の相撲大会」

(Lmaga.jp)

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