「本屋ができて町が変わった」大阪阿倍野でアナログな文化発信…「町の本屋さん」1周年
大阪市阿倍野区北畠で2025年3月31日にオープンした書店「本屋 亜笠不文律」。雑誌、文庫、コミックなどが幅広く並ぶ「町の本屋さん」と独立系書店の中間という営業形態が注目を集め、現在では、地域はもとより遠方からの来店も多い人気店として、知名度を高めている。
前編の記事では、新刊総合書店の数が激減する書店業界の中で、紆余曲折あったオープンまでの道のりを中心に紹介した。今回は、本の販売以外で注力しているカフェ営業やイベント開催など、「本屋以外の機能」について、店主であるアガサ ジューンさんに話を聞いた。
取材・文・写真(一部)/伊東孝晃(赤犬 タカ・タカアキ)撮影/Lmaga.jp編集部
◆ ソフトクリームにポン菓子、こだわりの紅茶が演出する読書タイム「本屋 亜笠不文律」では、新刊本の販売だけでなくカフェ営業も展開。飲食スペースである2階には閲覧用と販売用の古本が置かれており、テーブル席で読書&ティータイムのゆったりした時間を過ごすことができる。
ドリンクは大阪に本社を置き、阿倍野区に直営店を持つ「amsu tea(アムシュティー)」の紅茶をメインに提供するなど、喫茶メニューのセレクトにも、アガサさんのこだわりが光る。
「ドリンクメニューは、私が好きな紅茶を軸にしたいと考えていました。『amsu tea』は厳選した茶葉を直輸入しているブランドで、渋みや苦みが少なく、とにかく風味と香りが良いです。近隣地区に直営店があるため元からブランドのファンだというお客様も多く、好評をいただいています。茶葉は、直営店と同じお値段で当店でも販売しています」
紅茶以外にコーヒーやフルーツジュース、メロンソーダ、クラフトコーラなども提供しており、店内飲食はもちろん、テイクアウトも可能。さらにはソフトクリームの他、スナック類も増やしていきたいとのこと。
「紅茶と一緒に食べられるスイーツも欲しいと思ったのですが、なにぶん小規模なお店なのでお客様が集中すると手が回らなくなってしまいます。そこで調理に時間がかからないソフトクリームに行き着いたのですが、おかげさまで開店以来、人気メニューとして好評をいただいています。他にはお茶請けとして、ご近所で評判の飲食店スタッフさんが作る、ポン菓子をお出ししています。キャラメリゼされたポン菓子の甘さが紅茶に合うので、こちらもぜひ食べてみてください」
◆ 本にまつわる講座やトークイベント、音楽ライブ…カルチャー発信地としての役割2階は喫茶と古本販売に併せて、イベント会場としても活用しており、イラストのギャラリー展示なども併せて、カルチャー発信地の役割も担っている。
「開業前から本屋以外の機能を増やしたいと考えていて、この地域にあまりない紅茶を重視した喫茶やギャラリー、イベント開催を重視しました。ギャラリーについては、今、デジタルでマンガやイラストを描く時代ですが、紙ベースで描いている方の原画展を行うことで、アナログの持つ芸術的な面を知ってもらえたらと思っています」
イベントは、2025年11月に筆者も出演したビルマニアカフェ・西岡潔氏の著作『特薦いいビル 千日前味園ビル』の発売記念トークライブや、作家を招いての創作講座などを定期的に開催。キャパは30人も入ると限界だが、それゆえに毎回、濃密な空気感を生み出している。
「トークイベントでは主に著者をお招きし、本を通じて広い世界に出会うきっかけにしてもらえたらと思っています。企画内容は常々アイデアを探していますが、どちらかというと仕入れ作業をしているときに、ふとひらめくことが多いですね」
「昨年5月にGOMES THE HITMANのボーカル・山田稔明さんのライブとトークイベント、そのご縁で作詞家・作家の高橋久美子さん(元チャットモンチー)のトークライブも開催。私の手が届かない範囲にも輪が広がって、本当に周囲のみなさんに助けられています」
◆地元を描いたブックカバーやレシートコラム…足を運んで見つけたい店頭でのお楽しみ最後に、「本屋 亜笠不文律」へ足を運んだ際に、ぜひ目を向けてほしいポイントをご紹介。本の購入時にプラス10円で付けることができるお店オリジナルのブックカバーのイラストは、イラストレーター、漫画家として活躍するスマ見氏の描き下ろしによる作品。
お店がある阿倍野筋沿いの景色が素朴なタッチで描かれており、青空と夕焼け空の2種類のカラーリングが美しい。2階のカフェスペースにはサイン入りのプリントが展示されている。
さらに、お店オリジナルのマルシェバッグと無料の紙袋に押されるゴム印のイラストもスマ見氏の作品。マルシェバッグは1つ880円で販売されており、早速買った本を入れて帰る人も。また、コミティアなどイベント限定で販売されていたスマ見氏のリトルプレスも購入することができる。
本棚には2025年のオープン記念で原画展を行った松本英子氏をはじめ、さまざまな漫画家から寄せられた色紙も見ることができる。お店でプッシュする新刊の発売時には、新たな色紙が増えるかもしれない。
そして、本を買った際に手渡されるレシートには、アガサさんの日々の思いを綴ったコラムが。お店の情報はXでも発信しているが、そこでは見られない秘話が書かれていることもあり、読み応え抜群だ。
このように、本の販売だけにとどまらず、さまざまな楽しみを発信する「本屋 亜笠不文律」。2026年3月31日に開店一周年を迎えるにあたっての取り組みもスタートする。
「昨年に好評を博した『さくらソフト』が、期間限定販売で復活。ワッフルコーンのソフトクリームにさくら餡や小豆、桜の塩漬けといったトッピングが盛り盛りのスペシャルサンデーです。また図書カードでの商品購入も可能になります」とアガサさん。
今後、町のホットスポットとして、ますます注目を集めそうだ。「本屋 亜笠不文律」は、大阪市阿倍野区王子町4-3-18。営業時間は平日12時~20時、土日祝11~20時。月曜定休。
(Lmaga.jp)
