関西人には懐かしCMでお馴染み「味園ユニバース」閉館…赤犬メンバーが語る珍プレー好プレー「明日への活力…」
いよいよ7月に惜しまれつつ閉館する千日前の「味園ビル」(大阪市中央区)、そして地下のライブホール「ユニバース」。その軌跡を「エンターテインメントの卸問屋」こと13人編成のバンド・赤犬と共に、たどるインタビュー企画の後編をお届けする。
前編では、ベーシスト・りしゅうに、味園ビル2階で経営していたバー「マンティコア」の思い出を中心に話を聞いた。後編となる今回は、赤犬のコーラス部隊・ナイトサパーズ(ロビン、ヒデオ、テッペイ)とボーカルのタカ・タカアキに「ユニバース」での思い出を中心に語ってもらう。
2011年に開催された赤犬のワンマンライブ『赤犬歌謡祭』を機にライブ会場としての「ユニバース」がスタートしただけに、他では聞けない貴重なエピソードの登場に期待がかかるが・・・。
◆ 今はなきサウナや宴会場も…総合レジャービル・味園の思い出──前回は、ベースのりしゅうさんにご登場いただきました。今回は、ナイトサパーズとタカ・タカアキさんに味園ビルや「ユニバース」についてのお話をうかがいます。まず、「味園ビル」に来るようになったのはいつ頃からですか?
ロビン:2002年ぐらいですかね。「Cafe Q」(前編にも登場したBABY Qの主催・東野祥子=煙巻ヨーコがオーナーを務めていたカフェバー)のヨーコちゃんから「お店を一晩貸すからなにかやって」と言われまして。当時ハマっていたモーニング娘。のCDをどっさり持っていってDJをすることになったんですけど、プレイの技術もないので、曲をかけながら延々と彼女たちの魅力を語るというプレゼン形式で挑むことにしました。
──プレゼン形式のDJ!なかなか 斬新ですね。お客さんの反応はいかがでしたか?
ロビン:お店が開いていたら誰か来るだろうとたかをくくっていたのですが、これがまったくの見当違いで・・・。結局、来たのは同窓会帰りの一見の5人組だけで、彼らを相手にモーニング娘。やミニモニ。の素晴らしさを長時間にわたって語っていました。
タカ・タカアキ(以下:タカ)『ロッキー・ホラー・ショー』の冒頭で、館にカップルが迷い込んできたようなシチュエーションですね。
ロビン:当時の「味園」は「九龍城砦」(※)ぐらいミステリアスなスポットでしたからね。それが、今やWi-Fiも入るほど整備されているのだから、隔世の感を禁じえません。(※編集部注:香港に1993年まで実在した巨大スラム街。映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』の舞台)
ヒデオ:私はBABY Qにも参加していたので、「味園ビル」の屋上で、パフォーマンスの稽古をさせてもらうことが何度かありました。そのときまだ、CMにも出ていたトゲトゲの照明も残っていて、いかがわしい雰囲気が魅力的でした。
◆ 「今宵の歓楽も、明日への活力…」味園といえば、あの懐かしのテレビCM──当時は「ユニバース」がまだキャバレー営業をしていましたが、お客として行かれたことは?
ロビン:1回だけあります。自分の親と同年代の熟女にお相手していただき、ビールの味がいつにも増して染み渡ったことを覚えています。
タカ:僕も1~2回ぐらいですね。「ユニバース」の料金設定はミナミでもぶっちぎりのお得さでしたが、当時の我々がそれを上回るほどの金欠で、通うにはほど遠い状況でした。
ヒデオ:私は行けずじまいでしたが、テレビで見る「ユニバース」のCMではダンサーの方が全裸で踊っていたり濃厚なキスシーンがあったりして、「いつかは自分も・・・」と、夢と秘部を膨らませながら見ておりました。
テッペイ:僕も行けないままだったのですが、「明日への活力・・・活力・・・活力・・・」というフレーズが今でも頭の中でリフレインしています。
タカ:先日のワンマンライブ『赤犬歌謡祭』(2025年2月23日開催)でも、味園CMのオマージュがあったんですけど、どれぐらいの方に分かってもらえたのか気になるところです。
ヒデオ:漫才師の「じゃんけんぽん」師匠が殿様姿になってるやつですね。関西のU局(※)では深夜帯を中心に大々的に放送されていたので、サブリミナル効果で数百万人が記憶しているはずですよ。(※編集部注:独立UHF局のサンテレビ、KBS京都、びわ湖放送、奈良テレビ、テレビ和歌山)
──その他に、味園ビルのフロアの中で訪れた場所はありますか?
ヒデオ:宴会場は何度か行かせてもらったのですが、酢豚の味付けがスイーツ並みの甘さだったことが忘れられません。
ロビン:給仕のみなさんが当時すでに妙齢だったので、今もお元気でいらっしゃるか…とても気になるところです。
ヒデオ:あとは、サウナ風呂の内装がサルバドール・ダリがデザインしたのかと思うほどの異世界でしたね。入浴して現実世界に帰れる気が、まるでしませんでした。
タカ:洞窟みたいな雰囲気で、たしかプールもありましたよね。僕も一度だけですが、行くことができて良かったです。
◆ 『赤犬歌謡祭』から始まった、ライブホール「ユニバース」の軌跡──赤犬は2011年、「ユニバース」のキャバレー営業終了後にワンマンライブ『赤犬歌謡祭』を開催し、現在に至るまで何度も出演してきました。ここからは、「ユニバース事件簿」と題して、ライブ会場となった「ユニバース」での思い出などをお聞きできればと思います。
ロビン:我々、かつては過激なイメージを持たれることもあったようですが、二代目ボーカルのタカが加入した頃にはすっかり大人になっていたので、ユニバースで事件といえるようなことは起きてないんですよね・・・。
あ、でも、「ユニバース」ではなく、ライブハウス「ファンダンゴ」(堺市)での出来事ですが、テッペイさんが出初式のパフォーマンスをした際、猿股衣装の股間部からみごとな「ハダカデバネズミ」を露見させたことは、後世まで伝えるべき事件の記憶です。
ヒデオ:たしか、ガーリックボーイズとご一緒したときのことですね。今日の取材で伝えたい、最も大事なポイントです。
タカ:多数の目撃情報が寄せられ、SNSもざわついておりました。
テッペイ:私自身、出ているとは夢にも思わず上機嫌ではしごに登って、気づいたときには手遅れでした・・・。ガーリックボーイズのラリーさんには後で謝罪したのですが、ポロリに対して「最高だったよ」と、まさかのお褒めの言葉をいただきました。
ロビン:実は出た瞬間、本人は分かっていなくて、気づいてから慌てて隠そうとする様子が素晴らしいんです。あの光景を思い出すだけで、焼酎4杯は呑めますね。
ヒデオ:ストレス社会の現代において、心を和らげる癒やしのような瞬間でしたね。あ、それで、なんの話でしたっけ。
──すいません、「ユニバース」での思い出についてです。
ヒデオ:最初のワンマンライブの下見で「ユニバース」に行った時は、キャバレー営業の終了直後ということもあり、艶っぽい残り香がムンムンに漂っていました。今、楽屋になっているところが、ホステスさんの控室だったのですが、片方だけのハイヒールや、不要になったハンドバッグが残されており、生々しい雰囲気にしびれましたね。
テッペイ:私は、何度目かの『赤犬歌謡祭』で、開演前のカラオケコーナーに某アイドルグループの臨時メンバーとなり、スカート姿で踊らせてもらったことが忘れられません。
タカ:アイドルプロデューサーとしての片鱗がその頃から・・・。
テッペイ:「ユニバースのステージに立てるで」と声をかけ、自分もちゃっかり出るという、古田敦也ばりのプレイングマネージャーぶりを披露しました。
ロビン:最初の『赤犬歌謡祭』では開場時間中、メンバーがボーイに扮してお客様の出迎えと給仕をするというサービスも行いましたね。面白かったのでまたやりたいけど、開演ギリギリまで接客するので着替えの時間を考えると難しいかなぁ・・・。あと、私の場合、スタッフのみなさんとの付き合いも長いので、ドリンクを注文すると自動的に濃い目のハイボールを作ってくれるシステムが確立されています。
◆ 渋谷すばる主演『味園ユニバース』、純烈と共演『夜はともだち』で異文化交流タカ:最初のワンマン以降もいろいろなイベントに出させてもらっているのですが、映画『味園ユニバース』のファンイベントは、今思い出しても不思議な体験でしたね。
ロビン:映画のロケ地を巡るツアーで、ゴールが「ユニバース」だったんです。我々4人が司会を担当したのですが、数百人のお客さんが会場を見学した後、なぜか我々と握手&撮影会をおこなうことになって・・・。
「渋谷すばるさんは来ません」と事前にしっかりアナウンスしていたのですが、大盛況となりました。みなさん思いが強すぎて、もはや我々が、すばる君に見えていたのかもしれません。
タカ:正気に返ったときの落胆ぶりを考えると、申し訳なさでいっぱいです。
テッペイ:純烈とのツーマンライブ『夜はともだち』も新しいお客さんと出会うきっかけになりましたね。
ヒデオ:マダムのみなさんに赤犬を知っていただけたことで、我々のダンディズムも格段にレベルアップしたかと思います。
純烈ファンのみなさんは、スタンディングの会場が初めてだったのか、ステージからせり出した中央の花道に、お荷物や買い物袋を置かれてる方が結構いらして、あわやお供えものと勘違いするところでした。
ロビン:私は白川さん(白川裕二郎・純烈のメインボーカル)とあまりに密着しすぎてファンの方から怒られないかと、ライブから数日間、身を潜めて生活しておりました。
タカ:『夜はともだち』は、2017年、2019年と開催して、早く3回目がやりたいんですよね。ただ、このイベントは「ユニバース」ありきなところも大きかったので、それに代わる会場探しが大きな課題です。
──2月に開催されたワンマンライブでは、「ユニバース」の総支配人?も登場して、「最後にふさわしいショーにするように」というミッションを託されていましたね。
タカ:「ユニバース」総支配人こと、地獄大帝ゴーゴン!
ロビン:永源遥ばりにツバ飛ばしながら叫んでいましたね。ヘッドセットを装着していましたが、声が大きすぎてスピーカーが飛んだそうです。
ヒデオ:当初は指令に従い、通常の50倍の火薬を使って跡形も残らないぐらいのショーをお届けする予定でした。しかし、我々の後にも公演があるとのことで現在、プランを練り直しています。いずれにせよスリル・スピード・セックス満載の内容になることは間違いないので、どうぞご期待ください。
◆ 最後となる6月29日のワンマンライブ後、アフター「ユニバース」の赤犬が向かう先は?──前回話を伺った、りしゅうさんのお店「マンティコア」が、2024年末で17年の歴史に幕を閉じました。りしゅうさんの今後について、バンド内でなにか話されていますか?
タカ:スタジオでもよくその話題になりますが、まだ特に決まっていないようです。
ロビン:映画『味園ユニバース』のおかげでかなり儲かったと思うので、その資金を元にカナダでお土産屋さんでも始めるんじゃないでしょうか。
──それ、大橋巨泉じゃないですか!
ロビン:屋号は「ORギフトショップ」でお願いします。
ヒデオ:なにかとお世話になっていたお店なので、できれば再開してほしいところです。その際は小芋の煮っ転がしやふきの炊いたんなどを出し、カラオケも歌い放題の店にしてもらえたらと思います。
ロビン:それは、もはや「スナック蟻」(味園ビルからほど近い、なんばの老舗スナック)なのでは。りしゅうの再就職先は蟻のホステスということで。
テッペイ:ふらっと立ち寄れる場所が欲しいので、やはり、どこかで店を構えてもらいたいですね。
ロビン:私、現在、自宅が遠方なため、店内畳敷き、雑魚寝OKにしてもらえると助かります。
◆ 「なんばロケッツ」「十三ファンダンゴ」「ユニバース」さらにユスリカまで…赤犬が発揮する特殊能力──赤犬にとって「ユニバース」はホームともいえる場所だったと思います。閉館後の拠点については、どうされる予定ですか?
テッペイ:こことかどうだろう?という感じでいろいろ話していますが、とりあえず6月29日のワンマンライブ(前売チケットは既にソールドアウト)が終わらないと、どうにも進まなさそうですね。
ロビン:実は、これまで、「なんばロケッツ」「十三ファンダンゴ」「ユニバース」と、我々がワンマンを行ってきた会場って、すべて閉店の道筋を辿ってるんですよね…。自覚はありませんが、ライブハウスにとって赤犬が死神のような存在になっているのではと、慄いております。
ヒデオ:私は先日、赤犬の別働隊のミクロムス(※)の形態で『大阪・関西万博』のイベントに初出演したところ、それまでまったくいなかったユスリカが大量発生したので、呪いの力が発動してしまったのかもしれません。(※編集部注:赤犬からクスミヒデオとグッチ、 そして菅野稔子の三人編成の楽団)
タカ:このような見えざる力に翻弄されがちな赤犬ですが、長くお付き合いしたいというお店がありましたら、ぜひ、お声がけいただけたらと思います。
文/タカ・タカアキ(聞き手/Lmaga.jp編集部)
写真/みやちとーる
(Lmaga.jp)
