よしもと漫才劇場の異端児・ダブルアート、尖り節で貫く「決意の出囃子」
お笑い芸人が舞台へ上がる際に流れる音楽「出囃子」。芸人にとっては自分たちの登場を知らしめる重要なテーマ曲、また舞台に立つエンジンであり、それぞれに思い入れがあるはず・・・。
そこで「よしもと漫才劇場」(大阪市中央区:以下、マンゲキ)所属芸人から、曲に込められた想いや経緯などを深掘り。マンゲキメンバーの兄貴的存在で、お笑いコンビ・スマイルの瀬戸をインタビュアーに迎え、9回目の今回は狂気的なボケがクセになる、ダブルアート(タグ、真べぇ)に迫ります。
■「ペコペコする奴大嫌い」…すごいショッキングで(タグ)瀬戸:インタビュアーの瀬戸でございます。今日はよろしくお願いいたします。
タグ:いいんですけど、何で瀬戸さんなんや・・・。こんなとこまで進出してきたら、もう次どこ行くねんって感じですよ!
瀬戸:そこは引っかかると進まないので(笑)。もう9回目なんですよ! 前回のフースーヤからの推薦やねんけど、これまでもダブルアートは芸人票多かったよ! 改めて聞くけど、2人の出囃子は?
タグ:「JAPAN-狂撃(くるう)-SPECIAL」の『なめんな音頭』って曲で。聞き馴染みのあるようなグループじゃないですし、いろいろ引っかかる部分はあると思うんですけども。
瀬戸:そうですよねぇ。・・・で、最初の歌詞が?
真べぇ:「ペコペコするのが大嫌い、ペコペコする奴大嫌い」、ですね。
瀬戸:ハハハ! もうメッセージ性しかないやんか!(笑)
真べぇ:そこから「なめられたらなめかえす、合い言葉は『なめんなよ』」って続く・・・ちょっと祭り節の曲なんですよ。
瀬戸:でも納得いくのよ。この出囃子が流れて、お客さんが「何!?」ってなったときに2人が出てきて、あのファンキッシュな漫才見せられると・・・しかもこの曲ってイカついけども、声のキーなんかな? ちょっとポップさも残してるというか。これはどういう経緯でこの曲になったの?
タグ:これは単純に2人が影響を受けたバンドの曲で。最初に歌ってる人が「ようかいくん」っていう人なんですよ。その人はボーカルじゃなくてベースなんですけど、芸人なる前の友だちで。
瀬戸:ダブルアートはバンドもやってるもんね。
真べぇ:僕たちがバンドしてるときに、一緒に全国ツアーとか回らせていただいてたんです。で、「JAPAN-狂撃-SPECIAL」はそのままメジャーデビューして、この曲が1発目のアルバムに入ってるんですよ。
瀬戸:ほぉー! なるほどね。
タグ:「ペコペコする奴大嫌い」っていうのが、ようかいくんが昔からずっと言ってたフレーズなんですよ。僕の5歳上なんですけど、当時はそれがすごいショッキングで。なんか大人とか社会に対して、すごい自分の思いを投げかけてた人で、言うてることはめっちゃアホなんですけど、どこに行ってもようかいくんは「ようかいくん」なんですよ。それがかっこいいなって。
瀬戸:自分を曲げない、信念を貫いていると。
タグ:「自分が自分であるか、そうじゃないか」みたいなことを、ようかいくんはずっと言ってて。出囃子どうするってなったときに、お互いなんの相談もなく「この曲でいいよな」って、自然になっていましたね。気持ちを高ぶらしてくれる曲でしたし。
真べぇ:ようかいくん、今は宮藤官九郎さんとかとバンドとか芝居したりしてるんです。僕、何回も見に行かしてもらってますけど、未だにペコペコしてないですね(笑)。
■自分の意思を伝えることが「なめんな」に繋がる(タグ)瀬戸:それだけ影響を受けた人のかっこいいと思っている曲を使おうと。芸風も「ペコペコするのが大嫌い」じゃないけど、オラオラで行ったんぞ、俺らは俺らの感じで行くんや!っていうのは、どっかでうめ込まれてるんかもしれんね。
タグ:「なめんなよ」っていうのは、尖るっていうことではなくて、自分らの思ったものを突き通すっていう気持ちが強いっていうだけやと思うんですよ。その人のことを何も知らんから、なめるわけじゃないですか。だから、自分たちの思ってること伝える=「なめんな」ということであって、あれは別に社会に対してとか、周りに対して言ってるんじゃなくて・・・平等を訴えてる曲なんですよ。
真べぇ:そう! もう男も女も関係ないとか、女も子どもも関係ないっていう。
タグ:だから「なめられたらなめ返せ」っていうのも、言いたいこと言ったらいい、思ったことやったらええやんっていうようなメッセージやと思うんで。
瀬戸:今、タグさんすっごい良い顔してるんです。ここなんですよ、瀬戸が登場している理由は! すごい前のめりで喋っていただいて・・・まだお酒入ってないでしょ?
タグ:一切入ってないです。
真べぇ:完全に酒入ってる顔で喋ってましたね(笑)。
瀬戸:深夜3時のテンションでありがとうございます(笑)。でもねひとつ思うのが、自分らでもバンドやってたわけやんか。ハードコアパンクで、ノリのいい曲は絶対あったはずやのに、自分たちの曲でいったろうというのはなかったん?
真べぇ:単独ライブで使うとかはいいんですけど、出囃子で毎回っていうのは・・・。
タグ:曲って、結構本音が見えてるようなものじゃないですか。それが見えるのが恥ずかしいんやと思います。あと、モチベーションが違うというか。バンドやってるときと芸人をやってるときの舞台の立ち方、テンションが絶対違うんです。
瀬戸:芸人の俺だけを見てくれと・・・本当に別ものとしてるんや。そこも繋がってるんちゃう? ペコペコしないスタンスというか、我が道を行くというね。
真べぇ:まさに僕らの曲で、『我が道』っていうのもあります。
タグ:いやいや、もうそれを出囃子にってなったら、なかなかキツいで・・・。「思った分だけ勝つまでやれや、生きた分だけ立ち向かえ」って、歌詞がやばいですから。
真べぇ:だいぶ寒いですね(笑)。
瀬戸:いや、今はお笑いの地・難波で聴いてるから笑ってしまったけど、ちゃんとスタジオとかで聞いたらめっちゃかっこいいと思うけどなぁ。今のようかいくんの話から始まり、バンドの歌とか軌跡をたどっていくと、ほんまにダブルアートの芸風にちゃんと繋がってるんやね。
■僕の目標は、「タグが認められること」(真べぇ)瀬戸:小学校からの幼なじみの2人やけど、お互いを見て、どんな芸人やなって思ってる?
タグ:真べぇは、しょうもないことを全力でできますね。僕にはできない・・・俯瞰で見てしまうところがあるので。
真べぇ:僕はお笑いを「楽しい」の方向でいってるんで。でもタグは「おもしろい」、自分が信じてるもんがおもしろいっていうスタンスでやっていて、嘘をつけないんですよ。
瀬戸:ダブルアートの色としてはマッチしてるけど、真逆やもんね。ほんまに別人。
タグ:真べぇは最高におもろい素人ですよ(笑)。ほんで、懐の入り方うまいんです。だから小手先のプロフェッショナルというか・・・。
真べぇ:誰が素人やねん!(笑) でも、小手先で今までやってきたっていうのは、めちゃくちゃ自覚があります。でも、それが好きなんです。ほんまにずっと楽しくやってて、お笑いに関して芯がないんですよ。これは絶対やりたくないとか、本当にないですね。
タグ:「楽しい」っていう芯はあると思いますよ。だから懐もでかいんですけど、芸人はやっぱり「形」を作らなあかん。それを真べぇなりに研ぎ澄ましていって、もっとグッと入っていってほしいなと思うことはあります。でも逆に、ここボケにならへんって思ったとき、小手先のリアクションでこんなに笑い起こせるのはこいつだけやろうなと。
真べぇ:中学校のときからタグに「お笑い芸人になれ!」って言い続けていて、タグがほんまに芸人になるときに僕がノリで付いてきてもうたんですよ。なんで、特殊かもしれないですけど、僕の目標は「タグが認められること」。お客さんがネタを見てドン引きしてるときすらも、結構気持ち良かったりするんですよ。
タグ:僕がついていけへん空気にさせてしまったところもあるんですけど、そういう「ネタに戸惑う期間」があって、僕らは結構苦労をしてきたので・・・。でもここにきて、1年目くらいのフレッシュな気持ちでやれてるんです。
瀬戸:すごいコンビやね! でも、ダブルアートのここ数年の感じを見てると、やっとお客さんが見方を分かってくれるようになったというか。タグの芯を持った狂気的なボケが躍っている空気に、ちゃんとお客さんを巻き込んでる感じがあるもんね。
タグ:そうなってきてるんですかね? でも最近、僕がやってることに対して真べぇも一緒にやろうとしてくれてる感じがすごく伝わってきますし、今こそ「なめんなよ」って気持ちが1番強いかもしれないです。僕ももっと分かってもらうために、真べぇにもお客さんにもアプローチせなあかんなって。
瀬戸:もっと上にいけるコンビっていう潜在能力は、昔からどの芸人も認めてるやんか。それがやっとマッチしてる時期にきたんやなぁって思うわ。
タグ:僕ら、次に売れる「ネクストブレイク芸人」って言われ続けて、もう10年以上経ってるんですよ(笑)。
瀬戸:やってることはそんなに変わってないかもしれないけど、なんか2人の空気感というか。コンビ感のバランスと時代がやっとマッチしてきたんかなぁ。
瀬戸:お笑いの話で熱くなってしまいましたが、今回出囃子特集ということなので。ダブルアートにとって、出囃子とはというものなのか? というのを聞かせていただきたいんですけど。
真べぇ:僕は「スイッチ」ですね! あの曲聞いたら、「お笑いスイッチ」が入る。
瀬戸:入れざるを得ない曲やもんね。でもさ、「ペコペコするのが大嫌い」って流れてすぐに「どうも、ダブルアートです!よろしくお願いします~」って・・・。
真べぇ:いや、めっちゃペコペコしてるんですけど(笑)。
タグ:ほんまやん!あかんやん!今気付いたわ!(笑)
瀬戸:もう1発目のボケ始まってるってことですもんね。でもこの曲は確実にスイッチ入るわ! タグは?
タグ:僕は「校歌」みたいな感じですかね。自分たちが作った曲ではないですけども、やっぱり自分らの思いとか、これから作り出していきたい自分の人生や芸風・・・その道っていうのが込められているっていうところで。
瀬戸:素晴らしい。良い答えやわぁ。
タグ:9回やってきて、今までになかったですか?
瀬戸:校歌はなかったなぁ。「スイッチ」は5人ほどいました。ただ一番言い方明るかったよ!(笑)
タグ:それが真べぇの良いところですね。それなりのテンションで言えてるから。
真べぇ:いや、ちゃんと恥ずいけどなぁ!(笑)
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取材/瀬戸洋祐(スマイル)写真/木村華子
(Lmaga.jp)
