中川大志「俳優だからと線を引くのではなく」、殻は破り続ける

大河ドラマ『鎌倉殿の13人の男』(NHK)では、迫真の演技力で日本中を沸かせた24歳の中川大志。歳追うごとに厚みが増し、演劇界での「期待のホープ」としての呼び声も高い彼は、まさに時代の経過とともに七変化を見せる俳優であり・・・彼のそんな姿がファンを飽きさせない理由なのだろう。

そして、今回は新たな挑戦として「舞台」に挑む。鬼才の劇作家・倉持裕が作・演出を手がける『歌妖曲~中川大志之丞変化~』では、初座長を務めることとなり、俳優、また20代半ばという1人の人間としても、もっとも勢いのあるフェーズに入った中川。本作への意気込みはもちろん、改めて俳優としての在り方・軸について、話を訊いた。

写真/木村華子 取材・文/Lmaga.jp編集部

■ 「前の自分だったら背負いきれなかったかもしれない」

──今回はご自身の名前がタイトルにも入っていたりと、「完全当て書き」という作品になりましたね。

「当て書きです」と台本を渡されたわけはなかったので、その観点としては読んでなかったですね。純粋に作品として読んでいたので、そのフィルターは意識していませんでした。色んなところにポスターやフライヤーが貼られていて、見慣れないという感じはありますが(笑)。

──そうだったんですね。では「舞台」について、訊いていきたいのですが、中川さんにとって本格的な舞台は初めてだそうですが、実は小さい頃からダンスの舞台には立ってらっしゃったんだとか。

そうですね、芸能界に入ってから「その経験が大きかったのかな」と気づきました。それが芸能界に入りたいと思ったきっかけではなかったんですけど、お芝居をしていくなかで、「人の前でパフォーマンスをして、それがお客さんに届く瞬間」というのを子どもながらにも鮮明に覚えていたので、時間を経て自分の性に合った仕事に出会えたのかなって。

──それっておいくつだったんですか?

3歳とか4歳でしたね。当時は、お芝居の経験がなかったんですけど、ダンスで表現するということはしていました。そういう部分では「表現する」ということのルーツにはなっていますね。

──ではダンスに始まり、役者の期間を経て、今回ようやく中川さんの原点に戻るというか。中川さんの俳優人生のなかでもターニングポイントのひとつになるのかなって思います。

そうですね、もちろん怖いですし不安なこともあるけど、ここまでやってきたからこそ、舞台上でも戦えるだろうという自信もあります。初めての舞台で、主役を演じるということは、ちょっと前の自分だったら背負いきれなかったかもしれない。

だから今はこの舞台を通して、どういうものを得られて、どういう景色を見ることができるのか、という想像がつかない部分を楽しんでいます。

──それこそ映像作品の場合は、観ている人の反応や反響ってリアルタイムで分からないじゃないですか。舞台に立ってこそ感じられる「生」の時間というか、そんな非日常な空間が舞台にはありますよね。共演の山内圭哉さんも会見で、「70%はこちらで作るけど、お客さんが残りの30%を作る」と、舞台の特異性について話されていましたね。

その場で出来上がるというのが、すごいことですよね。同じ時間、同じ空気を吸って、同じ温度のなかで・・・ずっと想像してるんですけど、始まってみないと分からないんだろうなって思います。

■ 「おもしろいことを具現化する瞬間が、すごく楽しい」

──中川さんの出演作のなかでも、多くの人が印象に残ってるであろうドラマ『家政婦のミタ』。放送から約10年が経ちましたが、その間に大河ドラマから学園ものと、とにかく幅広い活躍が目立っていました。改めて振りかえってみていかがですか?

学生だったこともあり、すごく長い10年という感じでした。でもまたここから10年は、もっと早いんだろうなって思います。

──30歳まで5年あるとして、計画を立てるとなると、ステップアップとしてどんなことをやりたいですか?

ほんとに10代の頃から変わらないんですけど、やったことのないことをやりたい、ただそれだけですね。新しいことをやりたいし、新しい人と新しいチームと仕事をしてみたい、そのなかで俳優としてレベルアップしていかないといけない。

──以前のインタビューで、「俳優としての中川大志、普段の中川大志のバランスが俳優業として生きてくる。演じてない時間に誰と何をするかが重要」と話されてたのが印象的で。今はどうですか?

それは今も変わらず思っています。結局自分の経験や記憶でお芝居をするので、自分が何をされたら悲しいのか、自分が何をされたらうれしいのか。「すべて芝居のために」と考えているのではないのですが、自分の生活、自分の時間というのはすごく大切にしています。

──なるほど。

自分の人生が豊かになればいいなと、いつも考えています。ネガティブなこともポジティブなこともひっくるめた自分の感情や経験を、すべて変換して昇華できるお仕事なので・・・改めて考えると、それは不思議な仕事だなと思いますね。

──先ほども俳優を「自分の性に合った仕事」と話されていましたが、俳優をしていない自分って想像できますか?

俳優ではなくなったとしても、このエンタメを作るという仕事が好きなので、何かしらでは関わりたいというのはあるんですよね。昔から裏側のシステムに興味がありました。

──それは幼い頃から大人の環境を見てきたから?

そうですね。技術的なことも興味があったし、「この機械は何なんだ!?」「このカメラは何だろう」「この機材はどうやって使うんだろう」とか。どうやって編集したらこの映像になるんだろうってこともそうですし、そこからいろんなことも見えてくるわけですよね。キャスティングとかお金のこととかも含め。

──いわゆる、プロデューサーの仕事の部分ですね。

たくさんの大人が関わってひとつのものを作ると思うので。1から10の過程があるとしたら、僕ら俳優が合流するところって半分折り返してるくらいの地点。僕らが出会う前の段階でもいろいろな過程があるんだなというのを知っていくと、すごく惹かれますね。おもしろいことを具現化する瞬間が、すごく楽しいんです。

──今後もボーダレスに、いろいろなエンタテイメントに携わられるのでしょうね。

そうですね。俳優だからと線を引くのではなくて、面白いと思うことはどんな形でも参加したいと思う。そういうセンサーってすごく大事だと思うんです。僕は何でも興味を持ちやすいタイプなので!楽しみにしていてください。

演じるということだけでなく、「エンタテイメント」に関して底知れぬ追求心を持つ中川。これまで映像としてしか見ることのできなかった彼が、今回はライブエンタテイメントである「舞台」に乗る。殺伐とした世界で歌い、踊り狂いながら復讐劇を企む「桜木輝彦」、またそんな桜木の本当の顔「鳴尾定」。この2つの役柄を通して、彼の身体からどんな世界観が生み出されるのか。

音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』の大阪公演は12月17日~25日に「新歌舞伎座」(大阪市天王寺区)で上演され、チケットはS席1万3500円、8500円ほか。チケットは現在発売中。

(Lmaga.jp)

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