萌え断やスライスで「和菓子」に再び注目、関西の老舗が仕掛け人

羊羹やどら焼きなど、時代とともに若者離れが進みつつある伝統的な和菓子。だが、転んでもただで起きないのが関西の老舗。独自の視点から現代に合うよう進化させ、さまざまなヒット商品を生み出している。

羊羹を1人用に切り分け、「萌え断」を演出創業は明治25年、大阪南部や和歌山で20店舗を展開する和洋菓子店「むか新」(本社:大阪府泉佐野市)。羊羹など細長い棒状の棹物は、核家族化や若い世代の和菓子離れで「食べきれない」「価格が高い」など販売数が10年前と比べ半減する危機状態に。

創業時からの郷土銘菓である蒸し菓子「むらしぐれ」を食べやすく小型化したものが好評だったことから、棹菓子も切り分け、4種の「匠の小函(こばこ)」を2020年11月に販売。「縁起物や贈答品を切り売りするのはいかがなものか」との葛藤もあったというが、2カ月半で約3万個が売れ、今や生産増の人気商品になっている。

職人歴30年の鶴原谷さんは、「棹もの菓子は和菓子進物店のこだわりの逸品。羊羹作りは鍋に1~2時間付きっきりで、丁寧にじっくり炊き上げます。小型化して販売することでお客さまに喜んでいただけ、製造現場も活気づいています。若い職人へ技を継承することができます」と話す。

切り分けたことで、改めて素材の組み合わせなど断面の美しさに気がつく「萌え断」が楽しめ、さらに手間が省けるとあって、コロナ禍のなか購入者から「衛生的」と喜ぶ声も寄せられたという。

1月21日からは、ハートが浮かぶイチゴ羊羹や蒸しカステラ風の浮島が入り、チョコを使ったバレンタイン限定商品「匠の小函 ショコラ」(4個・1450円)が販売されている。

小倉トーストに変身する、2.5ミリのシート状羊羹創業は享和3年、200年以上にわたり、地元の清らかな井戸水で京菓子づくりをおこなう「亀屋良長」(本店:京都市下京区)。和菓子文化をより広く知ってもらうためのきっかけ作りに尽力し、2010年にはパリの有名レストランで働いていたパティシエを中心に和と洋の素材を融合した新ブランドを立ち上げ、異業種とのコラボにも積極的に取り組んでいる。

2018年9月に発売され、総売り上げ数が12万個のヒット商品「スライスようかん」は、子育て中の女将が発案。忙しい朝食作りのなかで冷えて固くなったあんこを「スライスチーズのように簡単にトーストにできれば・・・」と感じたことから、厚さ2.5ミリのシート状羊羹が誕生した。手軽さが重宝され、これまでの羊羹に比べ、年間500倍の売り上げを記録しているという。

丹波大納言小豆などの厳選素材を使った羊羹を1枚1枚、職人が手作業でスライスする丁寧さは老舗ならでは。1月20日からはバレンタインの贈り物にも合う新作「スライスようかん CACAO」(594円)が販売されている。

カラフル&洋風な餡で、どら焼きをアップデート昭和15年の創業以来、どら焼き販売累計は5000万個を誇り、約60種のユニークなあんこも開発する「茜丸」(本社:大阪市天王寺区)。大阪土産でおなじみの「茜丸五色どらやき」が発売から30年になり、顧客層の高齢化など経営環境が厳しくなるなかで、ギフトの定番でもあるどら焼きの新たな開発が課題になっていた。

2020年に創業80周年記念商品として発売した「太陽のトマトあん」は業務用にも関わらず、見た目の華やかさや洋風の味わいがSNSで話題になり、どら焼きも数量限定で販売することに。

現在、ネット限定で販売中の「YODORA」(5個・3500円/送料込み)は、長年愛されている「茜丸五色どらやき」を継承したもの。洋風の要素も取り入れたラズベリー・抹茶・マンゴー・あんみつ・ブルーベリーの5種は美しい色味が目を引く。

また、フレーバーの要となる材料(果汁、抹茶など)とバタークリームの配合にもこだわり、風味と色のベストマッチを追求した新作で銘菓を目指しているという。

文/塩屋薫

(Lmaga.jp)

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