樹木希林、関西での最後のインタビュー「芝居を観れば生き方がわかる」

9月15日に、闘病の末、惜しまれながらこの世を後にした女優・樹木希林さん。彼女が京都を訪れた7月31日に、映画『日々是好日』(10月13日公開)について話を訊いた。これが関西での最後のインタビューとなる。

「芝居を見れば、その人がどう生きてきたかわかる。」

夏の京都のまぶしい陽のなかにその人はいた。樹木希林。全身ガンの病を抱えながら、ここにきて是枝裕和監督『万引き家族』、沖田修一監督『モリのいる場所』と充実した仕事が続く。新作は大森立嗣監督が、森下典子の原作で『茶道』を描いた『日日是好日』だ。

「これまで、現代劇でお茶、茶道をきちんと描いたものってなかったでしょ。だから面白そうだなって。でも、ホン(脚本)を読んで、主役を演じる役者次第だなって思った。それで主演が黒木華さんに決まったと聞いて私も決めたわけ。黒木さん、いいわね。しなやかで、若いけれど場数を踏んでいるからちゃんとホンが読めてる。もう一人、多部(未華子)さんもよかった。大胆で慎ましくて。お芝居にはその人の生き方が出るの。2人には女優として、このまま残っていってほしいわね」

本人は劇中で2人にお茶を教える先生を演じる。これまでお茶とは一切関わりがなかったというが、その手捌きはみごとだ。?「ずいぶん勉強したもの、プロデューサーに見張られながら(笑)。私はお茶は嫌いじゃないんだけど、作法では、お茶を飲む前に和菓子をいただくでしょ、あれがねぇ~。私は田舎のおばあさんが作るお饅頭が好きなの。お茶席の和菓子はそれは美しくて、愛でるのがくたびれちゃう(笑)。先生役は『どうぞ召し上がれ』って言うだけだから引き受けたのよ」なんて言うけれど、お茶を学んで思うところはやっぱりあったという。

「多くのシーンを撮影した一般家屋の中のお茶室、よかったわね。畳に床の間、床の間の花、外から季節の光が射し込んで。戦後、日本の家が醜くなったのは、ああいう『美』を無くしてしまったからでしょうね。多くの人が映画を観てそれを感じてくれたらいいわね」。

実は取材当日は、2日前にNYから戻ったばかり。ジャパン・ソサエティ主催の映画祭で、日本映画界への貢献者に贈られる賞を受賞した。「行くって返事したの、約束は約束だから。もうよれよれ(笑)、だけどそれを隠そうとも思わない。撮影中に体重が10キロ減ったけど、おかげで着物の着方に工夫ができたし。でも、まずはこの宣伝活動でひと区切りね」。

インタビューからおよそ半月後、大腿骨骨折から一時危篤状態に。そのときに、この人をまだまだ見つめていたいと思った矢先に届いた訃報の知らせだった。

取材・文/春岡勇二 写真/田中陽介

※7月31日に取材したものです。樹木希林さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。同記事は2018年10月1日Meets Regionalに掲載予定。

(Lmaga.jp)

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