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木彫りのパン、野菜、煮干し・・・、若手作家が追求する「リアル」の境界線

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「あまらぶアートラボ A-Lab」(兵庫県尼崎市)で9月17日までおこなわれている『それぞれのリアル』では、5人の若手作家が独自の手法で自分にとっての「リアル」を表現しています。

デジタル技術の進歩により、「リアル」の境界線が揺らいでいます。インターネットで検索すれば、あらゆる情報が即時に入手できるようになりました。ネットで複数の人格を使い分けている人も大勢います。VR(バーチャルリアリティ)が今以上に進化すれば、現実世界と仮想世界が見分けられなくなるかもしれません。しかし、いくら時代が変わっても、人間が「リアル」を欲する気持ちに変わりはないでしょう。

品川美香の作品は、無垢な瞳を宿した子どもを細密に描き、その背後に花、ミツバチ、宇宙、ストライプを配した絵画作品です。彼女は子どものなかに、かわいさと怖さ、可能性と危うさといった二重性と両義性を感知しています。

大洲大作は写真と電車の窓を組み合わせて、車窓風景のインスタレーションを作り出しました。子どもの頃から見慣れた風景や窓に映りこむ車内の様子などは、多くの人が通勤や通学で経験しているはず。大洲はそこに、個人的かつ普遍的なリアルを見出しているのです。

小林哲朗は、ドローンで空撮した尼崎市の風景や巨大建造物、360度カメラで撮影した風景の写真作品を発表。特異な視覚体験を通して、観客の常識や既成概念を揺さぶろうとしているかのようです。

川崎誠二は木彫家で、パン、野菜、お菓子、食材などをきわめて写実的に表現しています。その再現度の高さは驚異的で、何も知らずに見たら本物と思い込む人もいるのでは。ちなみに彼のテーマは、「見ること・認識すること」です。

三枝愛はこの会場で以前におこなわれた展覧会「A-Lab Artist Gate 2018」にも参加しており、連続出品となります。埼玉県の実家が営む椎茸栽培が東日本大震災の原発事故で受けた影響を、農作業の現物などでインスタレーションとして表現しました。

このように、5人の作家がそれぞれのテーマと方法で「リアル」を追求しているのが本展のおもしろさです。むやみに理屈っぽくはなく、どの作品も等身大の目線で作られていて好感が持てます。マニアでなくても楽しめる現代アート展としておすすめします。入場は無料。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)


(エルマガジン)

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