桂南光「落語家にもぜひ見てほしい」
大阪最古の能楽堂である「山本能楽堂」(大阪市中央区)で、3月26日に『流されて・・・』というテーマで能と文楽と落語という3つの伝統芸能が競演する。島流しなど、不遇な目に遭った者の哀愁を語るそれぞれの魅力にふれ、聞きくらべも楽しめる贅沢な試みだ。
出演は、観世流能楽師の山本章弘、文楽・太夫の豊竹英太夫、落語の桂南光ほか。今回『流されて・・・』をテーマとしたのは、4月に豊竹呂太夫襲名を控え、これが今の名で最後の公演になる豊竹英太夫が語る「義太夫 平家女護島~鬼界が島の段」を軸にしたため。
「平家女護島」は近松門左衛門の作で、流刑となった俊寛僧都が絶海の孤島・鬼界ケ島に一人残ることになる、という俊寛の絶望と孤独を描く「鬼界が島の段」が山場となる物語。「近松作品でわかりやすく能舞台にも向いている物語。能楽堂は聖域、神聖な気持ちで語らせてもらえるのはうれしく、集大成を届けたい」と英太夫。能は山本章弘による仕舞(主役のシテが見せ場を抜き出して舞うもの)の「鵺(ぬえ)」。「ぬえ」とは頭は猿、手足は虎、尻尾は蛇という妖怪で、旅の僧が寝ていると、夜中にぬえの亡霊が舟から現れ、退治されたいきさつを語り、僧に回向を頼む、という筋。
南光が演じる「質屋蔵」は、預けた物に人々の思いが詰まった質屋の蔵で、夜な夜な物たちがうごめき、流刑となった菅原道真の掛け軸もあり・・・、という噺。「昔の『上方風流(かみがたぶり)』のように異なるジャンルが集うのはいいこと。能を知ってもらう機会にもなりありがたい」と山本。英太夫に義太夫節を習い古典芸能の奥深さを身をもって体験している南光は、この公演を「落語家にもぜひ見てほしい」と語っている。
取材・文・写真/やまだりよこ
(Lmaga.jp)