逃げ恥で注目の姉妹ユニット、新アルバムリリース

唄とアコーディオンの姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンが1月18日にアルバム『トリトメナシ』をリリース。新垣結衣と星野源が出演し大ヒットとなったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(毎日放送)のオープニング曲『進め、たまに逃げても』のほか、Mr.Childrenがアレンジと演奏で参加した『かなしみ』といった豪華アーティストとのコラボ楽曲など多彩に揃うこのアルバムは、異次元のサーカスに迷い込んだかのようなチャランポらしいスケール感と高揚感、そしてどこかノスタルジックにさせるメロディと詞世界がより濃縮された1枚に。今回は彼女たちがアルバムに込めた想いを軸に、さまざまな環境の変化があったであろうここ数年の心境について聞いた。

取材・文/大西健斗

──今作を通してみても、2016年はこれまでのチャラン・ポ・ランタンの活動の中でひとつのターニングポイントだったのではないかなと思います。小春(アコーディオン/昭和生まれの姉)さんはMr.Childrenさんがサポートメンバーを迎えたツアーバンドの『ヒカリノアトリエ』で全公演参加したり、もも(唄/平成生まれの妹)さんはドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』(毎日放送)に前田敦子さんの恋敵役として出演したり。

もも「そうですね。それまではずっと2人でチャラン・ポ・ランタンとして活動してきたのが、2016年はそれぞれで活動もするようになったのが大きく違っていたと思います。チャラン・ポ・ランタンのツアーもあったし、あっという間だったなぁ・・・」

──でもやっぱり『逃げ恥』でオープニング曲に起用されたのは反響としてとても大きかったのでは?

もも「ドラマが大ブーム、大ヒットしてましたから反響はとても大きかったです! ネットで私たちの曲の『歌ってみた動画』をアップしてくれていたり、SNSとかでも盛り上がっていてうれしかったです。なにより私たちのことを知らない人たちが、ドラマで曲を知って歌ってくれていることがうれしいですね」

──そして小春さんが昨年の4月から開催されたMr.Childrenさんのツアー『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』に参加。それが決まった時、ももさんいかがでした?

もも「最初は、『Mr.Childrenさんって、あのミスチル?』と疑いましたね(笑)」

小春「そもそも桜井和寿さんがたまたま見た雑誌のレビューを読んで、偶然にチャラン・ポ・ランタンを発見したのがきっかけみたいで。25周年に向けてツアーをするとなった時、そのことを思い出してくれて本人が電話をしてきてくださったんです」

──心境としてはいかがでした? やはりかなりプレッシャーでしたか?

小春「初めは事の重大さを分かっていなかったですね。存在が大きすぎて、(桜井さんが)雑誌のレビューとか読むんだ!とか、コーヒーとか飲むんだ!って、最初はそんなことばかり思っていました(笑)。それが、一緒に演奏をするとなって徐々に実感が沸いてきて・・・。ももさんには伝わったと思いますけど、ツアーの初日はめちゃくちゃ緊張しました」

もも「私も客席から見ていて緊張した。『姉が緊張している!』って(笑)」

小春「Mr.Childrenさんの楽曲って、イントロのメロディーから一音一音、みんなが100%知っているじゃないですか。もちろん自分でも弾けるメロディーなんだけど(実際に『優しい歌』のイントロをその場で演奏しながら)、緊張して『間違えたくねぇ!』ってずっと考えているとステージの上で分からなくなっちゃうんですよね。そういう意味ではチャラン・ポ・ランタンとしてステージに立っている時とは全く訳が違いましたし、今までにないプレッシャーを感じました」

──それが、今回のアルバムに収録されている『かなしみ』では、アレンジと演奏でヒカリノアトリエとしてMr.Childrenとコラボすることになったと。

もも「ツアーの初日を観させていただいた時、とにかくライブの演奏がかっこよくてすごく感動したんです。同時に、ボーカルとして、このバンドで歌ったらどうなるんだろうと想像しながらライブを観ていたので、『このバンドで歌えている桜井さんっていいなぁ』と思いました。それで『私も歌いたいから曲を作ってほしい』という気持ちを小春さんに伝えたところ、ヒカリノアトリエ、Mr.Childrenさんのサウンドを意識しながら曲を書いてくれました。メンバーのみなさんにも聴いていただいたらすごく気に入ってくださって、今回のコラボが実現することになったんです」

──実際に、歌ってみていかがでしたか?

もも「ここで歌いたい、と言って実現したけど、このサウンドに包まれながら私はどれだけ歌えるのか、そこが試されているなと。歌えなかったら意味がない。そんな肩に力が入った状態でレコーディングを迎えたんですけど、スタジオに入ったらすごく空気が柔らかくて和気あいあいとしていたので、とてもリラックスして歌えました」

小春「Mr.Childrenのみなさんは、今までこういった形で他のアーティストにバンド編成でアレンジと演奏で参加するということが初めてだったそうで、『ヘッドホンから女の人の声がする!めっちゃテンション上がるね!今まで桜井しか聞こえなかったから!』って、ドラムのジェン(鈴木英哉)さんとか笑っていたりして(笑)」

もも「それから細かいアレンジの話をしたり、桜井さんにコーラスも入れてほしいと相談したりして。すごくいい作品ができて本当に良かったです!」

──今作はほかにも、東京スカパラダイスオーケストラとの猛々しいコラボ楽曲『雄叫び』だったり、子供も楽しくなって歌いたくなるNHKみんなのうたの『まゆげダンス』などがそろっていて、これまで以上にバラエティに富んだアルバムになっていますね。

小春「これまでのアルバムは、通して聴くとひとりの女の話に見えるだとか物語が自然とあったり、舞台みたいな世界観を感じられたらいいなと思えるアルバムだったと思うんです。だけど今回は、一曲一曲に別の気持ちを込めて作ったので、まぁこうなりますよね(笑)。全曲シングルのつもりです!」

もも「曲が先にできて、どうにもまとまらないなというので、アルバムタイトルも『トリトメナシ』に決めました。今までと比べても、いい意味でチグハグな気がしますね」

──チグハグだというお話とは逆になりますが、個人的にはどの曲もベースに今まで通りのもの悲しさがありつつも、「夢」や「理想」について歌っているのが新鮮に感じました。

もも「ほんとだ! 言われてみるとそうかもしれない。たしかにそうだ、夢がある・・・(収録曲のリストを見ながら)」

小春「夢があるような曲とかって、今まであんまりなかったんだよね」

──このタイミングでそういう曲ができたというのは、何かきっかけがあったのでしょうか? 新たに具体的な夢が見えたとか。

小春「それが、見えてはいないんですよね・・・(笑)。だけど今までなら、例えば『夢を持とう』という歌詞の後に『自分はそう思わないんだけどね』とわざわざ歌詞に書いていたんです。照れ隠しで。でもそれは余計だなと思うようになって、意識的に今回は省いたというのはありますね。今までは結局のところ、自分個人の話だったんですよ」

もも「聞き手に寄り添おうとしているのかな?」

小春「というか、自分の話をしたところでみんなはそんなに興味ないかもと思うようになったのかも」

──それはより曲の広がりを意識してということでしょうか?

小春「今までは、自分の話を書くことで、いろいろな気持ちを消化する曲作りをしてきたんだと思うんですけど、やっぱり自分の話で曲を作っても聴いている側からすると共感できるわけでもないんですよね。それってチャラン・ポ・ランタンの楽曲が、聴いている人たちの生活の中に入っていかないことになる。結局、ここ数年間は色物として面白いユニットがいるという番外編的な位置だったと思うんです。『今年のベストアーティストランキング』があったとしても私たちは番外編に入ってしまう。順位の中に、J-POPというジャンルの中に入れてもらえないんです。土俵にすら上げてもらえていないことをすごく感じていた。衣装だったり、そもそもアコーディオンがギターに比べるとマイナーな楽器だったり先入観もあるとは思うんですけど、自分のことについて書いている歌詞にも問題があったのかなと」

もも「でも意識し始めたということは、大きな違いだよね」

小春「うん、まぁ、正直売れたいんですよね」

──ひとことでいえば、「売れたい」と。

小春「響きがよくないですけど、つまりは『売れたい』ということなんです。それって、綺麗ごとで言えば、『たくさんの人に聴かれたい』ということなんですよね。聴かれない音楽って100年後に残っていないんですよ。まずは1曲でもいいから、シャンソンの『愛の讃歌』のように、歌っている本人も作詞作曲も誰だかあまり知られていないけれど、あのメロディーと歌だけがさまざまな歌詞とバージョンで残っているというような曲を作りたいんです。自分たちが死んでも、歌自体に残っていてほしいんですよね」

もも「歌は生き続けるもんね」

小春「曲がそういう生き残り方をするためには、さまざまな人たちにカバーされて伝わっていかなきゃいけない。今作を機に、そうやって生き続ける歌をこれからは残していかなきゃいけないなと思います」

(Lmaga.jp)

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