北海・大矢 元競輪選手の父に見せた成長

 「全国高校野球・1回戦、鹿児島実18-4北海」(6日、甲子園)

 試合終了のサイレンとともに、こらえていた思いがあふれ出た。泥だらけの顔を涙でぬぐいながら、北海(南北海道)の大矢勝幸内野手(3年)は「甲子園で校歌を歌うところを見せたかった」と言葉を絞り出した。

 勝負師の魂が宿っている。父の勇一さん(44)はS級1班で長く活躍した元競輪選手。大矢はその背中を見て育った。度重なる鎖骨骨折。椎間板ヘルニアで1年ものブランクをあけたこともある。それでも父は勇敢だった。「ケガした後のレースは怖いと思うのに、いつも突っ込んでいっていた」。昨年11月に引退。「お前が高校卒業まではやりたかったけど、体が厳しい」と告げられた。

 大阪・忠岡ボーイズの先輩に憧れて北海への野球留学を選んだ。寒さに驚いた下宿生活。冬場のクロスカントリートレーニングでは地元選手の中で転んでばかりだった。父と違って170センチに満たない小兵だ。それでも「練習はうそをつかない」という父の教えがあった。中学の控え選手は、1年秋に強豪の背番号4をもぎ取った。

 鹿児島実(鹿児島)戦の二回、甲子園初打席で右前打を打った。「甲子園に行ってくれるだけでいいと思って北海道に出したのにヒットまで…」。アルプスの勇一さんは、静かに泣いた。めったに自分から電話もしてこない息子は、聖地で確かな成長を見せてくれた。

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