横浜・渡辺監督“有終の美”へ快勝発進
「高校野球・神奈川大会1回戦、横浜9-0光明学園相模原」(12日、保土ヶ谷)
渡辺元智監督(70)が今夏限りで勇退する横浜が、2本塁打を含む14安打を放って七回コールド勝ちし、初戦を飾った。
勝負を楽しみ、選手の成長を喜んだ。最後の夏は、上々のスタート。「いつもと変わらない。私じゃなくて、選手が主役ですから。一つ勝つことで、力を付けてくる」。穏やかな笑みが、渡辺監督の顔に浮かんだ。甲子園優勝5度のタクトがさえた。1点リードの五回無死一塁で、8番・藤平にバスターエンドラン。中前打で好機を広げ、2点目につなげた。こう着状態だった試合を動かし、流れを引きこんだ。
これには「平田(部長)が『藤平はバントが下手。バスターはうまいです』と言うから、させてみるかと」と、ちゃめっ気を交えて種明かし。組み替えた打線でも、4番・公家が左越え2ランを含む4安打を放った。
打つ手が決まるのは偶然ではない。手には小さなメモ帳。「夜眠れずに起きちゃうので、気付いたことをトイレでメモしてます」と明かす。個々の調子や練習メニュー。状態を上げてきた公家のことも、しっかり記されていた。四六時中、教え子と野球が頭にある。
投手は藤平ら主力4投手を登板させて2安打完封。「雰囲気を味わわせるのは重要。一つのプレーが自信につながってくる」と、大会中の成長に期待した。自身も、ここ数年は内野のみだった試合前ノックを外野もこなし、準備は万全。有終の美への一歩を、名将はしっかりと踏み出した。