ケイバ熱盛ブログ「不正受給疑惑で思うこと」(2月21日)

 せっかく今年のG1が開幕したというのに、イマイチ盛り上がれないのはきっと、頭の片隅にアノ問題があるせいでしょう。世間を騒がせている、「持続化給付金の不正受給疑惑」です。

 先日、トレセンの厩務員らに申請手続きを指南したとされる税理士が、FAXでコメントを発表しました。

 「一部報道について」と題した約800字の反論。要約すると

 ・申請時の資料は正しく、いずれも受給要件を満たしており適正だった。

 ・そもそもコロナの影響は多種多様だから、受給の可否は一律に判断できるものではない。

 ・不正受給とは、架空の売り上げを計上して深刻することなどの詐欺行為。当法人は該当しない。

 こんなところです。法に触れてはいないのだから何が悪い。報道の仕方を考えるように-。そういう言い分でした。

 そもそも法って何でしょう。

 昔、知り合いの司法書士に聞いたことがあります。一字一句まで正確に覚えていませんが、確かこんな内容でした。

 「私はあなたのものを盗まない。だから、あなたも私のものを盗まないでください。…法はそんなやり取りから始まった」

 原点は人と人による、血の通った“約束”だったのです。盗まない、だまさない、殺さない-。それがいつしか明文化され、法が人を縛るようになり、それを盾にする人や、法の目をくぐり抜けるやり方を考える輩が現れました。

 年収1000万円稼ぐ人でも、要件さえ満たせば受け取れる制度自体が悪い、などと言う声もあるでしょう。申請時に収入が減ったかどうかを証明する書類すら必要ないケースもあるそうなので、確かにザルではあります。決め事に穴があるなら、それを突いてこそプロ。そういう部分では、渦中の税理士は優秀な仕事人だったと言えそうです。

 ですが、冒頭の反論。彼は一体、何に対して自信満々なのか。胸を張る方向が違うんじゃないでしょうか。困窮者を救う目的で生まれた給付金。隙だらけの制度とはいえ、給付を急ぐため、役所の人たちが仕方なく人の善意に委ねた面もあったはずなのです。くだんの敏腕税理士は法を守ったかもしれません。でも、暗にしのばせた「正しく使ってください」という約束を、自信を持って守ったと言い切れるのか。

 今回の事件が、どんな形で着地するのか見当もつきません。逮捕者が出るのか。あるいはあくまで法的にグレーだということで、ひょっとしたら誰も罪に問われないかもしれませんね。

 ただ、当初は調教師とそのスタッフ間の問題としていたのに、農水大臣にケツをたたかれた途端に背筋を伸ばしたJRAが、ハンパな仕置きで済ましてしまっては形無しです。清く正しい競馬会を証明するためには、世間が納得する裁きを見せなければなりません。正しいのならできなきゃおかしい-。ある意味、踏み絵を踏まされたわけです。

 こんな大ごとになるまで察知できなかった、われわれ競馬マスコミの人間も人ごとではありません。追及がこれ以上、なあなあになってしまうぐらいなら、マスコミの看板をさっさと下ろした方がいい。

 今週半ばにもトレセン勤務者の受給者数の集計が終わり、調教師会からJRAへ報告されるとのこと。どこまで情報が開示されるか分かりませんが、世間が忘れてしまわないうちに、決着をつけなければいけない事案だと思っています。

(長崎弘典)

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