嘉藤貴行騎手にまつわるウソのような本当の話~ 名前は大事です
トレセン内で取材するには”取材章”を着用することが義務化されており、そこには顔写真、所属会社、氏名が記されている。
初めて話す関係者だと、わたくしの取材章を見て「あの~、たまがわ…下の名前は何とお読みするのですか」と聞かれる。そりゃそうだろう。「祝」と書いて「はじめ」と読むのだが、こんなもの、学校では習いませんもんね。そして「おめでたいですね」となるのだ。確かに生まれながらにめでたい人間ではあるが、最近は困ったことが起きている。
50歳を過ぎると天に召される知人の比率が高くなり、当然、通夜や告別式に参列しなければならない場面が増える。そこで香典に「祝」なんて漢字を書くことに、どうしてもちゅうちょしてしまう。これ、マジで困っております。まあ、下の名前を平仮名で書くように工夫はするようにしましたが…。
さて、男子ならまず一生不変の名前であるが、これで少し損をしているのでは?と思える人がジョッキー界にもいる。それは新婚ホヤホヤの”嘉藤貴行”騎手だ。
もう今は勇退した調教師だが、こんなことがあった。「まだ騎乗者を決めていないので想定(メンバー)表を見せてくれるか?」と頼まれ、その方と一緒に見ていた。「あら!貴行が空いているじゃないですか!頼んだらいかがですか?」と記者が言うと、その調教師さんは「う~ん、貴行ね。腕はいいけど実はよ~、嘉藤の”嘉”の字を書いているとなぜか”喜”になっちゃうんだよ。書けないから、違う乗り役にしよう」。これ、うそのような本当の話なのだ。
コンピューター全盛の時代になっても、出馬投票は馬名と騎手名を手書きで提出する。確かに”喜藤貴行”なんて書いて出したら、「そんなジョッキーは存在しません!」と出馬投票課から突っ返されるのがオチですね。
貴行に会った時にその出来事を伝えて「オマエさん、騎乗数を損してないか?」と尋ねたことがある。すると、「ですよね。”加藤”だったらもっと集まっていたかも?」と、本人もそう考えていたのか(?)笑いながら語っていたものだ。(ちなみに婚姻届を提出した時に、本気で”加藤にしたいなあ”と思ったそうです)
自分ではどうしようもないことですが、名前はとても大事です。
(馬サブロー美浦支局・玉川 祝)