５月にボートレース第１１６期生としてプロデビューを果たした大山千広（１９）＝福岡・Ｂ２。彼女は現役のボートレーサーである大山博美（４９）＝６１期・福岡・Ｂ１＝を母に持つ。数あるプロスポーツの中でも、めったにお目にかかれない母ＶＳ娘の図式。今回は、親子でありライバルとなったこの二人にスポットを当てた。

　母・博美は、娘が幼かったころのことを思い出していた。「小さなころはレースに行く前、いつもビービー泣いてた。だからボートレースのことは嫌いだと…」。レーサーになりたいという娘の思いを知ったとき、正直驚いたと言う。ただ、クールで熱いものを表に出さない娘が、どこまで本気なのかが、まだ分からなかった。

　「生半可な気持ちではやっていけない世界」。身をもって知っていただけに心配はあった。ただ夢へ向かう娘の姿勢に、“強さ”などいままで知らなかった一面を見つけられた。

　デビューを果たした娘としては、最も身近な存在がいいお手本という状況なのだが、「一緒にいるとどうしても母親なんですよ。だから私から積極的にアドバイスすることはないと思います」とキッパリ。「いろいろな先輩に話を聞いて、その中から自分に合うものを見つけて幅を広げて欲しい」。プロとしての自覚を持ち、しっかりと一人前に成長して欲しいと願う。

　近々実現するであろう“直接対決”に、母親は「レーサーである以上、相手が娘であっても絶対に負けたくないですね」と話した。娘のいい目標であるため、そして娘が憧れたかっこいい母の姿を見せるためにも、簡単には譲れない戦いだ。

　普通の親子ほど一緒に過ごすことができなかったここまでの道のり。だが「これから先、お互いに共有できるものがあるのは幸せですね」と、最後はやさしい母の顔だった。