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ショーケンに5時間待たされた後に…

 ショーケンこと萩原健一さんとは日本テレビ系ドラマ「傷だらけの天使」で共演させていただきました。第16話「愛の情熱に別れの接吻を」(1975年放送回)。2人の最初のシーンは新宿のラブホテルを出て来る朝の場面。私はハンチング帽にブーツのボーイッシュな女の子。萩原さん演じる修(おさむ)にとっては一夜限りの遊びだったのに、私は本気で、その後も執念深く彼を追いかけ、修と接触する女性を憎み、殺してしまうという奇妙な犯人役でした。

 同年公開の映画「アフリカの光」でも一緒でしたが、朝、アフレコに行くと、ショーケンと田中邦衛さんと神代辰巳監督が何かもめている…。途方に暮れて待っていると、制作部の人が「これで遊んでおいでよ」と自転車を貸してくれました。多摩川の土手に行って、休日を楽しんでいる人たちを眺め、帰って来ると、日もとっぷり暮れていました。

 それでもまだ、クマ(神代)さんも監督として粘るし、ショーケンも自分の情熱をぶつけてくるし。監督の言いなりになる俳優じゃないんでしょうね。クマさんも台本通りじゃなく、ショーケンの案をアフレコで取り入れたりで。「ああでもない、こうでもない」と、5時間たっても終わらない。私はワンシーンだけなのに1日中待ったんですよ。

 ようやく終わると、ショーケンが「待たせて悪かったな。洋子、ちょっと飲もうや」と成城学園あたりの店に行ったんです。ビールを注ぎながら「今日は洋子の誕生日だったんだよな」って乾杯をしてくれました。その日は5月11日。私の誕生日をなぜか知っていたんです。やさしいとこあるんだなと。

 また同年、萩原さんはATG映画「鴎よ、きらめく海を見たか めぐり逢い」で、私をアパートまで押しかけて犯しに来る、ワンシーンだけの役を引き受けてくれました。ジョン・レノンみたいな丸いサングラスを掛け、私をいじめて「ヒヒヒヒ…」と笑うような役を、すごくこりにこってやっていました。

 あの映画ではショーケンが望んで盲人風になったんですよ。ただの犯しに来る不良じゃつまらないと言って。(劇中の部屋の中でついていた)白い杖といい、ほんとにこってましたね。あまり知られていない作品ですが、思い出深い映画です。

 「ダーティハリー(クリント・イーストウッド主演映画)の1作目に出ていた犯人役みたいな感じでやりたい」と、ショーケンは言ってました。自分が見て影響を受けた役になりきって情熱を込める。そのこだわり。

 あの人、ホント凝り性で、いろんなアイデアを出してくる。「アフリカの光」でも、私の役に「なぁ、洋子のあの役、歯にブリッジしたらどうか?」なんて言ってきたんですよ。その“歯のブリッジ”は映画「アメリカン・グラフィティ」で、途中で車に乗り込んでくるおませな少女がヒントのようでした。

 それに比べると、今の現場は、彼のようなこだわりが求められているのか…。穏やかになったというか、効率的になったというか。アフレコで5時間も待つなんて考えられない時代になりました。

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