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石橋蓮司さんに「おまえ、死ね!」と言われた那覇の歩道橋&渥美清さんの無常観

75歳の今も名優&怪優として存在感を発揮している石橋蓮司
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 那覇の歩道橋で石橋蓮司さんに「おまえ、今、死ねよ」と言われたんです。私が小説で新人賞をいただいた頃(1981年)の話。寺山修司監督の映画「さらば箱舟」の沖縄ロケ中、数人で那覇の街に遊びに出た時のことでした。

 現地解散して蓮司さんと2人で歩道橋を歩いてたら、「洋子さ、今すぐここからバンッと落ちて死ぬといいよ」って突然言い出すの。「は!?なんで私が死ぬの?」って聞くと、「今死んだらお前はスターだぞ。女優やって、寺山修司の映画に出て、小説書いて新人賞取って。今一番いい時にパッと死んだら、いいぞぉ。ここから落ちて死ねよ!!」って、うれしそうに言うんですよ。車がビュンビュン走っている道路の真上で。それまで普通の話をしてたのに、突然、何を言い出すのかと思うと、もう、おかしくてね(笑)。

 若くて旬な時に“花と散る人生”を、蓮司さんは夢見てるのかなと思いましたね。ジェームス・ディーンのように。半分冗談なんだろうけど、若くしてポンッと出た花は若い時に散らせと言いたかったのかもしれません。

 でも、その蓮司さんが、今一番長くやってるじゃないですか(笑)。「さらば箱舟」で共演した原田芳雄さんも、同世代で仲の良かった蟹江敬三さんもいない。回りが亡くなって、あの年代では面白い役を総取りして、一番、波に乗ってる俳優さん。今でも蓮司さんをテレビで見つけると、1人で思い出し笑いしてます。私にあのとき「死ね死ね」って連発した蓮司さんがねぇ…(笑)。

 映画「竜二」の金子正次さんじゃないですけど、「俳優が作品を残して死ぬ」ということを考えた時、私は渥美清さんの言葉を思い出すんです。「死んだらね、みんなだんだん忘れていくのさ。それでいいんだよ」と…。

 でも渥美さんは柴又の駅前に銅像や記念館もある特別な存在です。私が「寅さんはみんな忘れませんよ」と力説すると、渥美さん、こう返しました。「覚えてなくていいの。みんな『寅さん』も見なくなるんだよ。自然と消えるように忘れていくんだ、回りは。それでいいんだよ」って。

 渥美さんの無常観はこういう言葉に出るんだなと思いましたね。渥美さんは喜劇をやっていらしても、ものすごく冷めた視線を持っていました。亡くなってちょうど20年後の8月も終わろうとしていますが、今また、あの渥美さんの言葉がよみがえりました。

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