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勝新太郎編(下)弁当の話でボロボロ涙

 フジテレビ系「新・座頭市」第1シリーズ第28話「上州わらべ唄」(1977年4月18日放映)にゲスト出演した私が、芝居をその場で即興的に変えてしまう“勝新現場”を受け入れられず、「もう帰る!」って泣いた話を前回語りました。実は、撮影を終えて東京に帰る朝、勝新太郎さんとの忘れられない出来事があったんです。

 私は勝さんと同じ京都のホテルに泊まっていたんですが、朝、付き人さんがトントンと私の部屋をノックされ、「勝さんが下で待ってるから、お茶でも飲みませんか」と。「はい、分かりました」と降りていったら、勝さんがかしこまった顔で座ってるんですよ。

 「お前さんはな、いい芝居するのに、どうしてあんなふうになっちゃうの?」。勝さんに問われ、私は「だって勝さんが全部演出を変えちゃうから」と正直に言いました。「でもな、あの監督の絵コンテより俺の方が面白いだろ」。そう言われて、私は黙ってしまいました。「どうしていいか分からなかったし、すみませんでした」って謝ったんです。

 その出来事はこの後、起こりました。演技の話ではなく、お弁当の話で。おかずが二段積みできれいに入った京都のお弁当が毎日現場に届いてたんです。

 「勝プロってすごいと思いました。お弁当が素晴らしいです。この前にやった映画(宵待草)は、神代(辰巳)組だったんですけど、おにぎり2つとたくわんとか、梅干し弁当にちょっとお魚があったかなとか…。それに比べて、あのお弁当だけでも感動しました」

 私がそう言うと、勝さんの目がジーンと潤んできたんです。「あっ」と思った瞬間、その大きな目から涙がボロボロと流れてきて…。そのうちに泣いてる自分が恥ずかしくなったのか、決まり悪くなったのか、「おい、この子、送ってやれ。京都駅まで」と、うつむいて目をこすりながらつぶやかれました。そして付き人さんの運転で、勝さんの車、ジャガーEタイプに初めて乗せて頂きました。

 弁当をほめられて泣いた背景には、トラブルや借金を抱えながらも、出演者にはサービスしようという気持ちがあって、そこをくみ取った俳優がいたってことがうれしかったんじゃないかと思います。あんなにおいしいお弁当、私、テレビでは初めてでしたもん。

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