伝統×テクノロジー 変わりゆくお正月 年賀状じまい組増加!?リモート参拝、電子決済お賽銭も
2024年のお正月は、新型コロナが5類に移行して初のお正月となる。伝統的な行事が再開される一方、デジタルテクノロジーを活用した新しいスタイルのお正月風景が広がっている。
高校3年生のSさんは13日、14日に迫った大学入学共通テストを控え、初詣をリモート参拝すると決めた。オンライン授与所で御守りを購入予定。昇殿参拝は出来ないが、祈りを込めて参拝し、全力を尽くすのみ!と受験勉強に励んでいる。
京都の神社仏閣でも、新しい試みが次々と生まれている。縁結びの神様としても知られ国内外から多くの参拝客で賑わう貴船神社。水に浮かべると文字が浮かび上がる「水占(みずうら)みくじ」が人気だが、紙にQRコードが記載され、結果にアクセスできる。東本願寺ではお賽銭の電子決済を導入し話題になった。おみくじやお守りをスマホアプリなどでキャッシュレス決済している神社やお寺などもあり、支払額に応じてポイント還元される。八坂神社に設置のデジタルサイネージは多言語化され、外国からの旅行者も参拝方法などの知識を得られると好評を得ている。
40代のTさんは、今年「年賀状じまい」を決意した。年賀状を作る手間やハガキ代、インク代もかかるため、SNSへの移行を決めた。「年賀状だけの付き合いから解放され、スッキリした」と笑顔で語る。
こうした日本の伝統文化とデジタルテクノロジーによる新しい時代の融合について、日本の精神文化を世界へ発信する活動を行うマナー研究家の伊東香苗さんは「いまこそマナーを見つめる時。マナーは自己の礎です。自らの信念を持ち、行動、言動、所作、思いやり、他者との関わり方など、それぞれの美学を大切にすることは、自分へのおもてなしであり、自分を大切に生きることに繋がります」と語る。
一年を振り返り、心を整えるために、八百万の神様の力を借りるのがお正月。日本は古来、山に登り、松や竹を採り、歳神様の依り代とし、家に飾った。「こちらでお休みください」という気配り、つまり日本の精神性がそこにはある。鳥居と同様に、箸を横に置くのも日本独自の習慣であり、神聖な領域を表わす行為という。生き物の命は神様の領域であるという慎ましさを持ち、食するという意味合いがあるそう。「八百万の神々の文化は、謙虚さと感謝の心を育み、稲作文化は、助け合いと思いやりの心を目覚めさせました。モノや人を丁寧に扱う日本の奥深い精神性は、誇るべきものです」と伊東さん。
デジタルテクノロジーによって、日本の伝統文化に触れる機会が増え、その多様な価値を体験できるのは喜ばしい。四季の移り変わりや自然の美しさを愛で、日本が大切にしている感謝の心や利他の精神を伝えていきたい。
(デイリースポーツ特約・せと麻紗子)