7・16は「駅弁記念日」横浜と姫路、神戸と仙台…東西コラボの背景にコロナ禍と2つの震災…駅弁研究家が解説

 7月16日は「駅弁記念日」。日本の鉄道における“駅弁発祥の日”とされ、国土交通省が2001年に制定してから四半世紀になる。その駅弁を25年間で5000個以上も食べ歩いた研究家が東西2巻に分けて全国各地の駅弁を紹介した書籍「鉄弁」(ブックマン社)を世に出した。著者に話を聞き、数多くの駅弁の中から「東西コラボ」が実現したケースを紹介する。

 著者は放送作家で駅弁研究家の望月崇史氏(50)。書籍のタイトルを「駅弁」ではなく「鉄弁」にしたことについて、同氏は「駅弁は鉄道の一部であり、旅のお供。列車の車窓から景色をながめながら味わう文化を次世代に伝える行動を『鉄弁』と呼びます」と定義。つまり、駅弁という“モノ”だけでなく、その駅弁を巡る一連の「行動」の総称が「鉄弁」というわけだ。

 「西日本の巻」と「東日本の巻」の2巻合計で100種以上の駅弁を紹介。さらに一歩踏み込んで、商品として世に出るまでの経緯、作り手の苦労や心意気など舞台裏の人模様も描いた。この2巻の並びは「東西」ではなく「西東」の順となり、「西日本の巻」は東海道線から始まるため、東京駅や横浜駅も「西」に含まれる。

 最初に登場する駅弁は横浜名物「シウマイ弁当」(崎陽軒)。1日約3万食を売り上げ、「日本一売れている駅弁」とされている。発売から今年で72年。メインのおかずは日本最大の中華街がある横浜ならではの焼売だが、「焼き魚、かまぼこ、卵焼きという三種の神器」(望月氏)の入った“正しい”幕の内弁当でもある。そして、姫路駅(兵庫県)には「関西シウマイ弁当」(まねき食品)がある。

 望月氏は「約5年前、コロナ禍で各社が大打撃を受けた中から立ち上がる時に、コラボできないかということで、まねき食品さんから持ちかけられ、崎陽軒さんが『関西のためにシウマイを作りましょう』と快諾して動いたという話です。見た目こそ似ていますが、中身は別物。姫路駅の名物『えきそば』の和風だしでご飯が炊かれており、だし文化である関西の世界が広がっています」と解説。「えきそば」とは“姫路のソウルフード”として知られる立ち食いそばで、和風だしに中華麺という独特の組み合わせが特徴だ。

 東西のコラボは神戸と仙台でもあった。神戸を拠点に駅弁を製造する「淡路屋」がバブル期の1987年に発売した、紐を引き抜いて蒸気で温める加熱式の「あっちっちスチーム弁当」が、仙台駅の「網焼き牛たん弁当」(こばやし)を生み出すヒントとなった。駅弁と言えば、「冷めてもおいしいご飯」を実現するために「炊き方や米のブランドとブレンド」にこだわる一方で、「温かさ」を求める声もあり、その加熱式駅弁のパイオニアとなったのが淡路屋だった。

 望月氏は「神戸と仙台が『温かい弁当』でつながった背景には、阪神・淡路大震災(95年)の経験を東日本大震災(11年)で被災した仙台で生かすということもありました」と指摘。さらに、同氏は「淡路屋さんの加熱式弁当でいうと、98年の明石海峡大橋開通を記念して発売された西明石駅(兵庫県)の『ひっぱりだこ飯』があります。陶器製でタコ壺の形をした容器が独特で、持ち帰って箸入れやペン立て、鍋のアク取り用などに利用する人もおられます」と付け加えた。

 横浜と姫路、神戸と仙台…駅弁の東西コラボの背景には「コロナ禍」と「2つの震災」があった。

 ちなみに、冒頭で触れた「駅弁記念日」について、望月氏は「日本で最初の駅弁が1885年の7月16日に宇都宮駅(栃木県)で出たとされている説が有力です。おにぎり2つとたくあん2切れでした」と説明。ただ、駅弁発祥の駅には諸説あり、くしくも今回テーマとした「東西コラボ」に登場する神戸駅と姫路駅も含まれている。

 夏の行楽シーズンを迎えた。この時期の駅弁について、望月氏は「7月でしたら、うなぎ弁当。高級な弁当は予約が必要になりますが…。いずれにしても、どの駅弁も『安全第一』である鉄道の一部なので、夏場もしっかり保冷して、お腹を壊すことが絶対にないように各社、頑張っておられます」と補足した。

 だが、不景気や物価高など経済的な理由で「旅」から遠ざかる人も少なくない。同氏は「百貨店やスーパーで購入して自宅やオフィスで食べることも全然いいと思うんですが、やはり、駅弁の原点は『旅』にある。近場でもいい、家で食べるのとはまた違った味わいを体験していただければ」と呼び掛けた。

(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)

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