超大物も来店 新宿の伝説ジャズ喫茶が65年の歴史に幕 最後の夜に店内ライブ&配信「何かを残さないと」
東京・新宿を拠点に、数多くの著名なミュージシャンや文化人、ファンが集ったジャズ喫茶「DUG」が27日で閉店し、65年の歴史に幕を下ろす。「DIG」の店名で1961年に旧アルタ裏で創業以来、後発の「DUG」との2店舗営業や移転を繰り広げたが、創業者で写真家の中平穂積さんが2024年に88歳で死去。それから2年、建物の老朽化によるビル解体に伴う閉店を決めた。その「最後の夜」に無観客ライブを同店で開催し、配信する。(文中一部敬称略)
新宿の靖国通り沿いに白地に青で「DUG」と記された看板が目につく。店に通ったイラストレーター・和田誠さん(19年死去、享年83)が手掛けたロゴだ。店内に入ると、絶妙の音響でジャズが流れる中、中平さんが撮影したマイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、ビル・エバンスといった“巨人”たちの写真が壁に飾られている。村上春樹のベストセラー小説「ノルウェイの森」(87年刊行)に同店が登場したことから、国内外の“ハルキスト”が訪れることでも知られる。
2004年に高平哲郎氏よって編集された「新宿 DIG DUG 物語~中平穂積読本~」という書籍がある。高平氏はフジテレビ系「オレたちひょうきん族」「森田一義アワー 笑っていいとも!」をはじめ、ジャズ通で知られるタモリとのタッグで「今夜は最高!」(日本テレビ系)などを手がけた放送作家。同書にはジャズと共に生きた中平さんと店の歩み、交遊録や店内ライブの模様など、新宿という街や常連客の熱気と共に描写されている。
中平さんは1936年生まれ、和歌山県出身。日大芸術学部写真学科への進学で上京し、61年2月、24歳の若さで新宿駅前(東口)にあった食料百貨店「二幸」(※後のスタジオアルタ)裏にあるビル3階に最初の店「DIG」をオープンした。67年には新宿駅東口の紀伊國屋書店裏に「DUG」を開店して2店舗で営業。2000年に「DUG」が現在の場所に移り、1店舗となっても根強いファンが通い続けた。
一流のミュージシャンたちが店を訪れた。渡辺貞夫、日野皓正、日野元彦、山下洋輔、坂田明、秋吉敏子、アート・ブレイキー、セロニアス・モンク、スタン・ゲッツ、チック・コリア、今年5月に95歳で死去したソニー・ロリンズ…。店内でセッションやライブも行われ、米国人ジャズピアニストのマル・ウォルドンはソロアルバムのレコーディングを同店で実施。伝説のコラムニスト・植草甚一さん(79年死去、享年71)が解説を務めるレコード・コンサートも開催された。作家や写真家など各界の著名人が集う「文化サロン」でもあった。
中平さんは同書での高平氏との対談で「ぼくのジャズ喫茶は経営のためじゃなく啓蒙のためだった。ジャズ喫茶のあり方を変えて、正しくジャズを伝え、一番新しいレコードを聴かせてあげて…そういう義務感みたいなものがあったんです」と語っている。その思いを具現化したのが店内でのライブだった。
「新宿 DIG DUG 物語」を世に出した東京キララ社(出版社)の中村保夫代表は「ドキュメンタリー映画を撮ろうと、中平さんに各ミュージシャンの話を聞いていたのですが、そこで亡くなられて撮影が止まってしまった。さらに、お店までなくなると、何も残らなくなる。ここで何か残さないと…という思いが、今回のクロージング・ライブを映像作品として公開するという企画につながりました」と説明した。
最後のライブは「The Last Session at DUG~中平穂積を偲び、歴史の幕を閉じる夜~」と題し、須永辰緒、菊地成孔、グレース・マーヤらが出演。フィナーレの曲では、ゆかりの来場ミュージシャンによる自由参加のセッションを予定している。生配信は27日20時~22時で、アーカイブ期間は7月4日、23時59分まで。編集版配信は7月27日、20時から8月3日、23時59分まで。映像を通して65年分のオマージュを捧げる。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
