“ぬるま湯”への恐怖…若者が「パープル企業」を去る理由とは【キャリアカウンセラーが解説】

残業なし、有給消化100%、人間関係の悩みもない「ホワイト企業」に勤める入社3年目の女性が、転職を考えている。理由は、毎日ルーティンワークをこなし、1度も叱られたことのない環境で「市場価値が低い人間になってしまう」という将来への不安からだ。

労働環境は良いにもかかわらず、彼女のような若者が成長できない不安から離職していく、いわゆる「パープル企業」について、キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞いた。

ー「パープル企業」とは、具体的にどのような特徴を持つ職場ですか?

「パープル企業」については色々な定義付けがされていますが、労務管理の成熟に比べ、人材育成の設計が追いついていない組織状態を指しているように思います。

特徴的なのは、ハラスメントや離職を過度に恐れるあまり、上司が部下に対して踏み込んだ指導やフィードバックといった関与を避けてしまう点です。また、効率化や働きやすさを追求した結果、細分化された仕事が誰でも代替可能な形になってしまっているような場合もあります。

つまり、会社全体が過度な負荷回避を優先した結果、人材育成が制度として十分に設計されていない状態です。

ーなぜ、快適なはずの環境が、若者にとって「離職理由」になるのでしょうか?

バブル崩壊やリーマンショック、コロナショックを経て、「自分のキャリアは自分で構築する必要がある」という認識が根付いたことは大きな要因かと思います。そのため、「どこに行っても通用する力(ポータブルスキル)」を身につけることに関心が高まっている傾向があります。

パープル企業のような、安全性は高い一方で挑戦機会や役割拡張が限定的な状態は、自身の成長を実感しにくい環境になりがちです。そうすると、将来の可搬性を意識している労働者にとっては「キャリアの選択肢が狭まる場所」と感じてしまいやすくなります。

また、SNSを通じて他社で活躍する同世代の姿を目にする機会が増えたことも、「このままでいいのかな?」という焦りを後押しする要因の一つと考えます。

個人が将来を見通しづらい時代だからこそ、労務環境の安全性だけでなく、能力形成の道筋が見えることが、安心の条件になりつつあるのではないでしょうか。

ー若者が求めている「働きがい」や「成長」とは、具体的にどのようなものですか?

外部研修のような座学的な学びというよりも、仕事を通じたリアルな手応えを求めているのではないかと考えます。

自分の能力より少し難易度の高い役割を任され、その行動に対して適切なフィードバックをもらう。こうした成功や貢献を実感できるサイクルが回ることで、初めて職業人としての成長を実感できます。

一番のキーワードは「将来の選択肢が広がっている感覚」を持てるかどうかです。今ここで積んでいる経験が、10年後、20年後の自分を助けてくれるという見通しが欲しいのです。

ーパープル企業から脱却するにはどうしたらいいでしょうか。

働きやすさと育成は対立するものではありません。パープル企業は、成熟した労務管理の次に来る育成設計という課題に直面しているのだと思います。

働きやすさの先にある経験の質をどう高めるか。それが、パープル企業が次に向き合うテーマなのではないでしょうか。守ることと育てることの両立こそが、これからの組織設計に問われている視点だと感じます。

◆七野綾音(しちの・あやね) キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント

やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。

(よろず~ニュース特約ライター・夢書房)

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