自転車で被災地から1000キロ走破 ミュージシャン大武茜一郎「生で見ると全く別物」
音楽バンド「初恋(突然少年)」の大武茜一郎(24)が、被災地を自転車でつなぐ「カミングライダー」として熊本県から神戸まで約1000キロメートルを走り切った。10月31日に兵庫県・神戸空港島多目的広場で開催された音楽チャリティーフェスティバル「COMING KOBE21(通称・カミコベ)」のステージでは、各地で感じた思いを歌に乗せて観客に届けた。
カミコベは阪神淡路大震災を語り継ぎ、「神戸からの恩返し」として募金活動など全国の被災地支援を行う音楽フェス。「カミングライダー」は同フェスの企画の一部で、これまでのフェスで集めた募金の寄付先や被災地をロードバイクでめぐる。大武は、令和2年7月豪雨による被害を受けた熊本県球磨村を10月18日に出発し、各所で連日演奏を行いながら、14日間をかけて神戸までたどり着いた。
大武は「特に球磨村あたりの使われていない駅は本当にそのままで、線路も野草がぼうぼうに生えていた」と、被災から時が止まったかのような町の様子を振り返った。「リアルな年月を感じたし、それを写真に撮るのもはばかられるような気持ちになる。もし、テレビ画面で見ていたとしたら『大変だな』くらいにしかきっと思っていなくて。生で実際に見ることは全く別物だと思いました」。旅の序盤では球磨村と、同県・益城町の小学校を訪問し、児童ら数百名の前で弾き語りを披露した。
旅を終えカミコベのトークステージに登壇すると、14日間の思い出をギターの音にのせ「誰も知らない」というフレーズを繰り返した。大武は小学校で感じたことや、児童らの表情は「写真や動画で伝えきれない」と説明。町の人々が歓迎してくれたとも感謝し「『こういうことをしてもらいました!』と投稿して”いいね”をもらって、というのは野暮な気もするし、あくまでメディアに出しているものは一部でしかない。その場に行かないと感じられないものがあると思ったのでそういう意味での『誰も知らないもの』がある」と話した。
「正直、始めるまでは『僕がやる意味あるのかな』って」。歴代のカミングライダーは神戸にゆかりがある人物が務めてきただけに、東京出身の大武は「”東京もん”がこれをやっていいのかなと思っていた」という。
しかし、小学校での演奏などを経験し「歌や何かで『自分はこう思った』と多数の人に届ける術があるならそれを使ってやってみる」と考えが変化した。「それで少しでも、被災された場所で今でもどうにか頑張って残っている村のことに関心を持ってもらえたら、自分がやる意味があったのかなと思った」と感慨深げに語り、「(復興へと歩む地域に)興味を持ってもらえたら」と呼び掛けた。
(よろず~ニュース・今井 佳奈)
