住宅街の一軒家でアートの面白さを、「アート/空家 二人」が目指す“二人”の関係性とは

 現代美術の可能性を探る試みが、東京・蒲田で展開されている。「アート/空家 二人(nito)」は住宅街の一軒家を改築してアートスペースとし、独自の展示販売を行っている。間もなく開館1年を迎える成果と、その狙いを、代表の三木仙太郎氏に聞いた。

 昨年7月。一軒家に作品が集った。一階はフローリングの洋室、二階は和室のまま畳を張り替え、押し入れも展示スペースに加えた。「ここは家に持って帰ってもらうことが重要なので。僕は気に入っています」と三木氏。東京都や大田区の空き家活用助成事業を利用し、さらに費用を捻出して急ピッチでリフォームを終えた。一般的なギャラリーとは異なり、生活空間に近い場で、作品とアーティストが受け手とつながることを目指した。

 販売方法は独特なコンペ方式を採用。全作品が価格1万円から始まり、売れる度に次回は1万円ずつ上昇、4万円以降は2万円ずつ上がる(最大20万円)。ただし連続で売れなければ、そのアーティストは退場する。「日本では一人で作品づくりに没頭することが良いとされる風潮があります。僕は作品と人をもっとつなげたいと考えました。どちらが優れているかではありません。内輪だけでは面白くないと思ったのです」。入場無料。スペース名『二人』とあるように、つくり手と受け手が対等な立場で共存することを目指している。

 アーティストでもある三木氏は神奈川県出身。中高を過ごした愛媛・愛光学園では写真部に在籍し、大学受験時は批評や哲学に憧れたが、ひょんなことで東京藝術大学に入学した。2011年に同大美術学部先端芸術表現科を卒業し、14年に同大学院美術研究科修士課程を修了。以後3年間、自身の作品づくり向き合う中、アートへの、特に「責任」への思索を深めた。責任を負わないよう初めから無難や無為を選ぶこと、外からの責任を求められないよう内にこもること、その両方を拒んだ。忖度せずに結果を受け止めるという決意を固めた。「『二人』で“余白”をつくりたい。アートとは社会に“余白”をつくることで、“余白”とは社会を覆う空気に抵抗することだと思うのです」と語った。

 日本のアートの課題は“文脈”だと捉える。「頻繁に“アートは文脈”と取り上げられます。お笑いやスポーツなど全てに“文脈”はありますが、わざわざ言葉にはしません。日本でのアートは“西洋の文脈”ばかりを学び、日本で活動する際“文脈”が通じなくなるからではないでしょうか」。お笑いを例にするとダブルボケ、ツッコまないツッコミ、スカシなどを観客が論じることができるのは「ボケとツッコミ」という“文脈”を体得しているから。日本でのアートは“文脈”がないため、一般層には儲かるか、バズるかといった視点でしか語られないのだろう。『二人』はつくり手と受け手が“文脈”を育む場でもある。

 通常展は過去5回催され、来月25日に次回展が開かれる。また、今月11日までは初の特別展となる「アーティストによるポスター展」を実施(サイトからのポスター購入は継続中)。第1回から継続参加する作家作品は次回価格6万円になった。三木氏は「20万円になる作品をつくれたらいいですね」と期待を寄せる。その一方、来場者からの提案を基にして、1枚300円のコメントカードを導入したところ、熱いメッセージを好きな作家に書き込む者がいれば、入場料代わりに複数枚購入する者もいた。このような想定外の出来事を、全て前向きに捉えている。「作品は購入してくれる人がいないと成り立たないが、全ての人に開かれています。全ての人に見てほしいです」。今後については、立ち止まりながら思索を続けるため、未確定要素は多い。それでも三木氏は「楽しいこと、本気でやっている遊び、という考えはこれからも変わりません」と、明るい表情を浮かべた。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

サブカル系最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス