結婚生活では趣味よりも感性…オタク婚活事業の躍進を支えた転換点

とら婚アドバイザーの成田雅紀さん=東京・秋葉原
とら婚の立て看板
結婚情報誌とガンダム、仮面ライダーのアイテムが並ぶインテリア
3枚

 「とら婚」はオタクに特化した結婚相談所だ。今年2月に開業5年目に入り、過去の総結婚数は480人を突破と、順調に実績を重ねている。昨年1年間の結婚数185人、成婚率61・6%は、ともに日本結婚相談所連盟(IBJ)=全国約2640社加盟=のTOP10入りを果たし、全国で5社のみとなる最優秀賞の“ダブル受賞”を達成した。「趣味への理解だけでなく、感性や価値観も重要」という方針転換が、躍進のターニングポイントだった。

 お見合いに臨むアイドルオタクに、アドバイザーが諭すように語りかける。「毎週遠征に出かけていたら、彼女と会う時間がなくなりますよね。お金もかかりますし、結婚生活が大変だと思うんです。毎週ではなくて、月1~2回に減らせませんか」。こう、面談の様子を再現してくれたのは、アドバイザーの成田雅紀さんだ。

 16年秋、同人誌委託で有名な「とらのあな」吉田博高社長の鶴の一声で新事業が始まり、17年2月25日に秋葉原で開業。成田さんは直営店舗の店長から転身した。「詳しい者がほとんどおらず、当初は手探りに近い状態でした。外部募集と内部公募でスタッフを集め、ノウハウの蓄積を急ぎ、マニュアル作成やスキルシート導入、研修内容の作成等、アドバイザーレベルの均一化を目的として教育に力を入れました」と振り返った。

 オタクであることを、結婚紹介所から隠すよう指導されていた時代。反響は大きく、立ち上げ3日で200件を超える問い合わせが殺到。成婚率は17年で40%台と、上々の数字だったが納得できなかった。「同じ趣味同士を引き合わせても、うまくいかないケースがありました。例えるなら、阪神ファンと巨人ファンがお見合いした場合、相手チームを認められない場合があれば、同じプロ野球ファンとして尊重しあう場合もあります。結婚生活では感性や価値観も大事なんです」と気付いた。

 データの蓄積、オタク間での評判が好循環を呼び成長。積極的に仲立ちするアドバイザーは“オタク属性”が強い逸材ぞろいだ。成田さんは「オタクの方は真面目で、こちらの意見に耳を傾けてくれるんです」と感謝する。漫画家とデザイナー、医師と工芸作家など異色カップルが続々と誕生し、成年漫画家エレクトさわる氏の成婚は、オタク界で話題を集めた。男性会員の平均年齢36歳、平均年収は約585万円。会社員のほか作家やエンジニア、会社社長などクリエイターが多く在籍するのが特徴だ。オタク活動に注力するためか、比較的金銭的にゆとりのある人が多い印象だ。

 同社は成婚した退会者ともやり取りを行う。挙式や出産などの報告が励みになっており、さらなる事業拡大を視野に入れる。「成婚率61・6%は確かに高い数字ですが、38・4%は残念なケースで終わっています。成婚されなかった方への聞き取りも行っています。可能な限り成婚率を上げて、さらにお客様に満足いただけるサービスを提供していきたいです」。満足はしない。妥協せず、さらなる向上を目指していく。(デイリースポーツ・山本鋼平)

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