闘う映画「圧殺の海 沖縄・辺野古」

 沖縄の辺野古新基地建設に反対する市民と、警察や海上保安庁との攻防戦を追ったドキュメンタリー映画『圧殺の海 沖縄・辺野古』が2月14日に東京・ポレポレ東中野で公開される。監督は、辺野古を撮り続けて10年になる藤本幸久と影山あさ子両監督。大手メディアに代わって、ここでもフリーの監督たちが沖縄の現状を伝えるべく体を張って戦っている。

 両監督が沖縄のドキュメタリーを発表するのは『Marines Go Home-辺野古・梅香里・矢臼別』(05年)、『ラブ沖縄@辺野古 @高江』(12年)に続き3作目。今回は14年7月1日の辺野古の新基地建設の着工から同年11月16日の、新基地建設反対を掲げている翁長雄志が県知事に当選するまでをまとめたものだ。

 しかし、永田町に挨拶に来た翁長新知事が、安倍政権の皆様にことごとく冷遇されたことがニュースで取り上げられたように、沖縄の民意が反映される道は険しく、辺野古のゲート前と海上では、変わらず反対運動が行われている。そのもみ合いは激しく、2月3日も60歳代の女性が転倒して頭部を強打し、救急車で搬送された。

 実は劇中でも同様の事故が起こった映像を捉えており、日常茶飯事であることがうかがえる。藤本幸久監督が語る。「本来ならジャーナリストがやるべき仕事だと思うのですが、今回は同時性が重要だと思い、急遽、公開を決めました」

 現在、新基地建設を巡る取材は地元メディアも長期密着することは人員を確保するのも難しく、何か事件が起こった時に駆けつけるという状態だという。それどころかメディアを寄せ付けないように、取材位置に規制が敷かれているという。

 そんな中、藤本監督たちスタッフは、ゲート前と海上のそれぞれに2人体制で取材を敢行。また海上では、カヌーで反対運動をしている人たちに小型カメラを装着してもらい、海上保安庁との生々しいやりとりを記録している。その取材活動を支えているのは、全国の一般市民らによる製作協力金であり、作品の上映活動で得た収入だ。何が藤本監督たちを駆り立てるのか。素朴な質問をぶつけて見た。

 藤本監督が語る。

 「1つは88年に、土本典昭監督『よみがえれカレーズ』の助監督としてアフガニスタンに行きました。その時、ホテル近くのバスターミナルに砲弾が打ち込まれて30数人死にました。そこで亡くなったのは全部市民。近くに市場があってバスを待っていた、普通の人たちなんです。現代の戦争で市民が殺されていくところを見たなと思いました。撮影はしましたけどあまりにも凄惨だったので、映画では救急隊員に寄って撮影したものを使用してますが、僕は、人が人で無くなってしまった、バラバラの遺体を見ました。いまだに現場の様子がありありと浮かびます。最近、こう思うんです。そこで不条理な死を撮影したことで、俺はその死者を背負って帰って来たと思ってます。その戦争は米軍を通して現代にも繋がっているわけですが、(集団的自衛権の行使で)そこに日本も加わって人を殺しに行くと。それをどうしてもやめさせたいという思いが非常に強いんです」

 さらに、もう一つ理由があるという。

 「高岩仁さんと共同監督した初監督作『教えられなかった戦争-侵略・マレー半島』(02年)でもこんな経験がありました。戦時中、マレー半島で日本軍が中学校に乗り込み、教師たちを殺害した事件があったというんです。犠牲にあった教師の未亡人に話を伺おうと思って出かけたところ、『50年かけてようやく心の傷が癒えてきたところなのに、あなたたち日本人を見るとまたそこから血が吹き出るから帰って欲しい』と言われました。沖縄戦もそうですが、生き残った人にいまだに癒えない傷を与えているわけです。その傷の手当も済んでいないうちに、また新しい戦争に加わるのかと。どうしても納得出来ないという気持ちがあります。この2つの経験が、僕の活動の原点になっていると思います」

 本作は、沖縄・桜坂劇場で昨年10月末に90分の短縮版が公開。劇場側は「沖縄の映画館としてこれは上映しなければ」と、未完成の状態だったにもかかわらず、スケジュールを空けて待っていてくれたという。そして公開されるや、市民らに対する手荒い警備体制を映像で目の当たりにした観客が、海上保安庁などに抗議の電話をする事態へ発展したという。その数、多い時で1日数百本。にもかかわらず今年1月20日には、海上作業を撮影していた影山監督に対し、海上保安官が馬乗りになって妨害する行為が。その模様が1月23日の琉球新報に写真付きで掲載され、再び市民から怒りの声が上がっているという。

 藤本監督は力強く語る。

 「安倍政権としては、民意は衆院選で示されたと思っているのでしょう。なので沖縄では米国との約束を実行する。それを報じようとするマスコミを徹底的に排除したいようです」

 この取材の翌日、藤本監督は再び、沖縄へと飛んだ。市民たちと一緒に、きょうも最前線で闘っている。

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