「トワイライト ささらさや」新垣結衣

 ほおづえをつき遠くを見つめる新垣結衣=東京・日比谷のワーナーエンターテイメントジャパン(撮影・北野将市)
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 女優の新垣結衣(26)が、映画「トワイライト ささらさや」(公開中)で初の母親役に挑んでいる。はじけるような10代のイメージを保ちながら、近年は弁護士や狙撃手など新境地を切り開いてきた。自ら「学生服の方がイメージしやすいと思う」と口にするが、CMでの“若さ”と、ドラマや映画で見せる“成熟”を両立させられるのが彼女の魅力だろう。自然体をテーマに積み上げてきたキャリアと共に、家族観にも迫った。

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 ガッキーが母親になる-。10代の頃から彼女を知る人はそんな時期がきたのか、と感慨深く思うかもしれない。今年26歳。自分のことを誰よりも客観視している。「新垣結衣のイメージが、やっぱり赤ちゃんを抱いている姿より、学生服だと思うんです」と、正直な気持ちを明かした。

 「学生服の方がイメージしやすいだろうな…とは思うんですけど、じゃあ今、学生服を着て成立するのか、っていうのもありますし、どんな姿であれ、お見せする時は初めて。徐々に受け入れてもらえたらいいかなと思います」。気負いなく、自然体-インタビューを進めていくうちに、それが彼女のテーマだと分かった。

 来年が女優デビューから10年の節目となる。ティーン向け雑誌のカリスマモデル出身で、2005年、女優活動を本格的にスタートさせた。

 パブリックイメージは、ブレークのきっかけとなった06年の「ポッキー」や、放送中の「十六茶」「チキンラーメン」といったCMで見せる“元気で明るいガッキー”だろう。

 だが、近年は女優として、22日にスペシャルが放送されるフジテレビ系ドラマ「リーガルハイ」の弁護士、来年公開の劇場版で中心人物を演じるTBS系ドラマ「S -最後の警官-」の狙撃手といったように、難解な専門用語やプロの技量が必要とされる職業ものに挑戦してきた。

 次の主演映画「くちびるに歌を」(来年2月28日公開)では、天才ピアノ教師役で、子供たちと1カ月の離島ロケを経験。今回の母親役も含め、誰もが思い浮かべる“ガッキー”のイメージを保ちながらも、一方で“女優・新垣結衣”として、そのイメージを覆す難役に次々と飛び込んでいる。

 “女優・新垣”が演じる役には説得力があり、違和感を抱くことはない。「学生服的存在」から「成熟したプロフェッショナル」まで、両極のイメージを成立させるのは、新垣ゆえの魅力だろう。

 本人の“我”のなさがなせる技なのかもしれない。自身のキャリアの積み方を「何も考えてないです。流れに任せて、でいい。タイミングを見計らって、この役をやりたいなんて考えたことがないんです」と明かす。

 「いただいた役に誠実に取り組む、というスタンスでしかやってきていないんです。その時に出会った人たちが、きっと背中を押したり、引っ張ったりしてくれているんだな、と常々実感してます」

 風に導かれるまま、さまざまな役を経験してきたガッキーは「出会い運がいいんです、私」と笑う。求められるものに100%で応えようと“だけ”し続けてきた柔軟性が、振り幅の大きさを作り上げている。

 「トワイライト-」は、新垣演じる主人公・サヤの元に、交通事故死した落語家の夫(大泉洋)が現れるファンタジーだ。舞台は架空の街・ささら。遠近感のつかめないピントボケの撮影方法を意図的に、随所に取り入れるなど幻想的な演出が特徴的だ。映画「神様のカルテ」など感情の機微を描き出すことに定評のある深川栄洋監督(38)が「20~30年前にたくさんあった、日本の人情喜劇をやってみたかった」と狙いを明かすように、笑えて、ほろりと泣ける感動作となっている。

 劇中での新垣は、シングルマザーとして生後4カ月のわが子を育てる。実生活では三姉妹の末っ子で親戚も多いだけに「プライベートで赤ちゃんを抱かせてもらっていたのが生かされた」という。

 とはいえ、初の役どころに不安もあった。「(赤ちゃんを)抱かされているんだな、おっかなびっくりなんだろうな、って風には見えたくないな…ってことも考えました。自分が産んだことはないので、これでいいのか、って確信は持てないままですし」。

 だが、ふと気付いた。「サヤも新米ママ。周りに支えられながら、ママとして成長していく話なので、途中からは気負わなくていいかな、って思ったんです」と吹っ切れたという。

 沖縄県の生まれ。気候も、人々の心も温かな土地柄で伸び伸びと育った。母を演じることで、あらためて故郷にいる家族の大切さを感じたという。

 「自分も思春期を経て、家族とぶつかる時期がありました。でも、ありがたいもので、お仕事でいろんな人生を疑似体験させてもらって、身近な人の大切さに気付かせてもらうことが多いです」

 “ぶつかっていた時期”を「学生の頃から20代前半まで。ロングランです」と笑顔で振り返る。

 「何だか分からないけどイライラする時ってなかったですか?働き始めるのも人より早かったですし、仕事をするってことは東京に出てきて、慣れない環境にいるわけで…。自分でも気付かないうちにたまっていたものを家族にぶつけていたんだなと思う時期がありました。今こうやって話せているのは、その時期を乗り越えたから。家族だからぶつけるってことは、甘えているってことですし、甘えさせてもらえてるってことですよね。大事な存在です」

 仕事でも、私生活でも、少しずつ大人へと成熟していくガッキー。ファンの期待に応えながら、いい意味で裏切っていく-。そして、愛される存在であり続けるのだろう。

 ◆新垣結衣(あらがき・ゆい)1988年6月11日生まれ、沖縄県那覇市出身。2001年、ティーン誌「ニコラ」のオーディンションでグランプリ。05年に同誌を卒業するまで表紙を飾った回数は当時の最多を誇った。06年に江崎グリコ「ポッキー極細」などのCMに出演、ハツラツとした笑顔と共に全国区に。主演映画では、07年公開の「恋空」が興収39億円、10年公開の「ハナミズキ」が同28億円のヒットを記録している。

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