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【篠山輝信】生き方が胸を打つ名言集「フィリップ・マーロウの教える生き方」

 「ボクのイチオシ=4=」

 著者としてはこんな紹介されたくないかもしれませんが、本書は今、僕の家のトイレにあります。毎日トイレで適当に開いて、目に入る寸言を味わっています。(チャンドラーさん、アッシャーさん、村上さん、すみません)。

 これはあのフィリップ・マーロウの名言集です。ご存知の方も多いでしょうが、フィリップ・マーロウというのは、ハードボイルド小説の大家レイモンド・チャンドラーの小説の主人公です。何を隠そう僕はこのフィリップ・マーロウシリーズが大好きです。

 何が良いって、これはもう万人が認めることだけど、何と言ってもチャンドラーのオリジナリティー溢れる闊達(かったつ)な文体です。初めて彼の小説を読んだとき(例に漏れず『ロング・グッドバイ』でした)、そのぶっ飛んだ文章に度胆を抜かされました。

 マーロウの言葉はいつも極めてシニカルで、比喩はあまりに奔放で、態度は往々にして挑戦的で、使う言葉はお世辞にも上品とは言えません。しかし、そんなマーロウの言葉は不思議と不快ではないのです。それは彼の言葉と行動に、一貫した彼なりの正義を感じるからだと思います。隆盛を極めている社会の空気に流されず、その裏にある腐敗や欺瞞(ぎまん)を看過せず、たった一人で戦い続けます。いや、そこに勝ち目がないことは彼もわかっているのだろうけど、それでも彼は抗うことを諦めません。彼の矜持や職業倫理は今の時代にこそ響くメッセージであるとも感じます。唯一無二の文体の根底に流れる、マーロウの生き方への姿勢が読む者の胸を打ちます。

 「これほど厳しい心を持った人が、どうしてこれほど優しくなれるのかしら?」、彼女は感心したように尋ねた。

 「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」『プレイバック』

 痺れますよね。どのページにも含蓄に富むチャンドラー節が炸裂しています。思わず声を出して笑ってしまうものもたくさん。まだチャンドラーを読んだことのない人の入門にもいいですし、僕は「へえ、こんなセリフもあったんだ!」と再発見して、また小説を読みたくなります。とにかく一度、チャンドラーの文章に触れてみてください。もちろん、トイレじゃなくてもおすすめですよ。

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