【大場久美子 23】みんな同じ命なのだから

 一年くらい前でしょうか。あるショップの一角にあるコーナーで、トーク番組の収録がありました。早朝、ショップの営業時間前の収録でした。

 ショップなので楽屋は無く、近くのホテルの一室を準備部屋に用意してくださいました。現場までは5分ほど外の道を歩きます。その日はイベントがあるらしく、5分ほどの道のりには露店がたくさん出店されていました。

 番組終了後、着替えにホテルに向かって歩いていたところ、開店準備をしていたある店舗から、男の人の刺さるような低い声がかすかに私の耳に飛び込んできました。歩きながらそちらの方を見ていると大柄な男性が小柄なおじいさんにいきなり強い力でゲンコツを頭に振り落としました。「ゴツ!」と鈍い音と共に殴られたおじいさんは、重たそうな野菜のダンボール箱を抱えたままよろけました。

 一歩間違えば命にかかわるような殴り方だと感じた私は、とっさにおじいさんに近寄ろうとしましたが、いつもならそんな私を見守ってくれるスタッフや制作会社の方々に止められました。私は感情を抑えきれず涙が溢(あふ)れました。私の必死の訴えもその時はスタッフに聞き入れてもらえませんでした。それだけ現場はキケンで切迫していたことをスタッフも分かっていたからでした。

 ステージ衣装を着ていましたので、不本意ながらもホテルの方へ。さっと着替えた私は一人でそのおじいさんの元へ戻りました。

 ホテルの部屋を出る時には、スタッフは止めも追いかけもしてきませんでした。長年付き合ってきたスタッフには、私の行動は想定内だったのです。10分もしないで戻ったのにイベントが始まっていて大勢の客で露店の道は混雑していました。さっきのあの二人はもう居ません。しばらくそこで見ていましたが、二人は戻って来ませんでした。露店で使う材料を届けるだけの業者だったのでしょう。

 誰が偉い人と偉くない人を決めたのですか!おじいさんお元気ですか?今度お目にかかった時は、ご一緒にお食事したいです。

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