【ヤマヒロのぴかッと金曜日】ニュースの中にかき消される真実!パリ、大阪、2つの暴動で聞こえた民衆の声

大規模デモ ※写真はイメージです(StockPhotoPro/stock.adobe.com)
 パリ政治学院の前で座り込む学生ら=10月7日(共同)
2枚

 9月にフランス各地で始まったデモは、教育環境の改善を求める高校生が始めたものだった。権利の国・フランスで自分たちの意思を世に問うためのデモは珍しいことではない。その声は瞬く間に広がり労働組合、一般市民らも加わって参加者の数は回を重ねるごとに増えていった。

 さらに、大規模デモはイタリア、ベルギー、ドイツとヨーロッパの周辺国に及んでいる。社会への不公平感や将来への不安は各国の若者に共通しているのだろう。

 連日その模様を伝えるニュースを見て違和感を持ち続けていた。「一部で暴徒化した人が周辺の店を破壊し…」。コメントに合わせて打ち壊した店から暴徒が商品を略奪する映像が流れる。一部が暴徒化?正当な主張をするデモ参加者がそんなことをするだろうか?やがて“ブラックブロック”と呼ばれる活動家集団の行為だ、と修正するかのような報道への違和感だった。

 デモではないが、かつて大阪でも似たようなことがあった。

 今では街のイメージは様変わりしたが、大阪・西成区のあいりん地区(通称 釜ヶ崎)では、日雇い労働者の過酷な労働環境や社会的差別に対する不満、警察や行政に対する不信感から、群衆の抗議や衝突を繰り返した歴史がある。

 私が直面したのは、キャスターになって2日目、1990年10月2日に発生した『第22次西成騒動』である。ことの発端は、西成警察署の警察官が暴力団から賄賂を受け取っていたことが発覚した警察の不祥事だった。自分達の稼ぎの一部を「シノギ」と称してピンハネする暴力団からこともあろうにカネもろてたんか!?日頃の不満が一気に爆発し、怒りの矛先は警察に向けられた。

 「今から西成に行って様子見てきてくれ」。デスクから取材を命じられる。たった一人、しかも行ったことのない西成だ。萩之茶屋辺りでタクシーを降り、東へ歩いていくと、だんだん怒号が大きくなる。少し大きな通りに出てみると、労働者たちが走って逃げて行く。それを追いかける機動隊。気がつけば私もおっちゃんらと一緒に走っていた。

 どこをどう走ったか覚えてないが、公園の近くまで来て肩で息をしていると、屯ろ(たむろ)していた数人のおっちゃんから声をかけられた。騒ぎには参加していないが実状をよく知る人たちで、もらった缶ビール片手に気がつけば長時間話し込んでいた。

 思い切って関テレのキャスターだと名乗ると、一瞬怪訝な表情をしたが「見たことちゃんとテレビで喋ってくれるなら」と、この街のことを教えてくれた。翌日も、またその翌日も同じ場所におっちゃんらは居た。

 その頃から、警察署から離れた場所で物を壊したり民家の自転車が燃やされたりする事件が相次いだのである。「労働者の仕業か?」と報じたマスコミも多かった。関西テレビではどう伝えるかが議論になった。

 「よそから来た暴走族やチンピラが便乗して悪さしてると現地で聞いてます」。地元の情報網を持つおっちゃんらの話には信ぴょう性があったので、私はそう主張した。別の場所で取材した記者の中にも同様の意見があり心強かった。「よっしゃわかった。そういう声が複数出てるなら、ウチは書かん」。編集長の決断で誤報せずに済んだ。

 数日後、京阪神の複数の暴走族が検挙されたのだ。ずいぶん昔の話で恐縮だが、この時の経験がいまも私の取材のベースとなっている。先入観や思い込みはとても危険で、報道に携わる者は特に肝に銘じるべきである。

 ◇山本 浩之(やまもと・ひろゆき)1962年3月16日生まれ。大阪府出身。龍谷大学法学部卒業後、関西テレビにアナウンサーとして入社。スポーツ、情報、報道番組など幅広く活躍するが、2013年に退社。その後はフリーとなり、24年4月からMBSラジオで「ヤマヒロのぴかッとモーニング」(月~金曜日・8~10時)などを担当する。趣味は家庭菜園、ギターなど。

編集者のオススメ記事

芸能最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス