ホラーの名手・清水崇監督「恐怖とお笑いは紙一重で似ている」コメディー撮影願望も明かす
公開中の映画「だぁれかさんとアソぼ?」を特集する納涼連載「真夏のカイダン~ホラーとアソぼ?」。最終回は清水崇監督(54)が登場です。「呪怨」や「犬鳴村」などで知られるホラーの名手に、恐怖論を直撃。神髄を聞くと「ホラーとお笑いは紙一重」と持論を明かした。その心とは-。
◇ ◇
7月だけでホラー作品2本が公開された清水監督は、実に陽気な人だった。ホラー作品の現場ではよく怪奇現象が起きるとうわさされるが「監督がこんな感じなので、現場は『大丈夫?本当に怖くなるの?』ってスタッフやキャストが心配になるほど明るいことが多いです」と笑う。
「機材トラブルで現場が止まっちゃうことは、どんなジャンルでもあると思うんですけど、ホラーだと口をそろえて『え?これって…』と言い出す。めんどくさいんで『大丈夫です、ただの呪いで~す』と言ってます。アハハッ」
今作では、学校の階段でカセットテープに名前と日付を吹き込む遊びが怪異へとつながっていく。昨今のレトロブームからカセットテープを題材に採用。意識しているのは「入り口は浅く、身近なモノにする」ことだという。
「カセットテープもそうですけど、なるべく誰もが接しやすい場所、モノ、文化から入る。その方がリアリティーと共感性が増すので。いきなり突拍子もないところじゃなくて…というのは心がけているところです」
2001年の「富江 re-birth」で映画監督デビュー。03年の「呪怨」が大ヒットし、ハリウッドリメークも監督するなど、Jホラーを牽(けん)引してきた。
「僕自身もよくホラーばっかり四半世紀以上やってきているなって思いますね。自分でも不思議。こういう仕事ばっかりしているので、霊能者とか陰陽師の方と出くわすことがあるんですけど、必ず『清水さんは霊感がないと思ってるけど、がっつりあります。死んだ人の思いを知らせる運命にあります』みたいなことを言われます。半信半疑ではあるんですけど、それならずっとホラーやるしかないのかなぁって開き直って、楽しんでやろうって思ってます」
ホラーが嫌になったこともあるんですか?と聞くと「今もそうです。コメディー撮りたいです」と笑い、続けた。
「僕の中では恐怖映画とお笑いの表現は似ているんですよ。お笑い番組を見ていて『あっ、これひっくり返せばホラーにできるかも』って発想することも多いです。恐怖と笑いは紙一重で似てるなって思ってます」
「落とし穴」を例に「いきなり落としたら、そこで終わってしまう。あれ、ここだけおかしくないか?落とし穴…と思ったら違う。なんだ大丈夫か…と思わせて落とす。できるだけ隠しがうまいほうが怖さも笑いも引き立ちますよね」と説明し、ドッキリ企画に定評のあるTBS系「水曜日のダウンタウン」を「毎週みてます」とルーティンに入れている。
最後に「監督にとってホラーとはなんですか?」と聞くと「すごいな。『マスターにとってラーメンとは?』みたいですね」と苦笑して、しばし考え込んだ。「ホラーとは…えっ、なんだろ?『真剣に楽しめる、真剣なごっこ』。人間しか怖いことを楽しむってできないので。人間以外の動物は恐怖からは、ただ逃げるだけ。それを楽しめるのは人間のゆとりなんですよね」。かみしめるようにまとめた。
◆清水 崇(しみず・たかし)1972年7月27日生まれ。群馬県出身。大学では演劇を専攻。助監督を経て、黒沢清監督との縁で監督デビュー。代表作「呪怨」シリーズは、ハリウッドリメーク版も監督し、日本人で初めて全米1位を獲得した。他に映画「魔女の宅急便」「忌怪島」「あのコはだぁれ?」など。今年は「だぁれかさんとアソぼ?」「口に関するアンケート」が公開中で、9月に「八つ墓村」が待機している。
